カテゴリー:信頼性・保全性・安全性・R-Map

セミナー受講レポート

製品開発における信頼性の向上と造り込みセミナー

セミナー概要
2013年10月30日(水)~31日(木)に東京・日科技連・東高円寺ビルで「製品開発における信頼性の向上と造り込みセミナー」を開催しました(主催:一般財団法人 日本科学技術連盟)。
「製品開発における信頼性の向上と造り込みセミナー」は、従来の信頼性工学に加え、変化に対応するために必要な各企業の取り組み内容について整理し、これからの製品開発における造り込みの方向性について、具体的な事例をもとに紹介する講座です。
受講レポート

レポート執筆者:
株式会社村田製作所
佐藤 秀様

1.参加動機

近年、お客様が求める品質は多様化・高度化しています。これに応えるには、製造プロセスでの品質の作り込みだけでは足らず、より源流である開発プロセスでの品質の作り込みが必要です。本セミナーでは従来の品質工学の考え方のみならず、各企業の事例を踏まえた講座が開講されることを知り、開発プロセスにおける製品信頼性の向上を取組む上で新たなヒントが得られることを期待し参加しました。

2.セミナー参加を通して

手法の使い方に主眼を置いたセミナーが多い中で、本セミナーは設計開発の現場でいかにして信頼性を造り込むかという実践的な知識が得られるセミナーでした。講師の方は各企業の技術者であり、設計開発の現場の取組みを、技術者視点で、技術者自身の経験に基づき語ってくれる貴重な体験ができました。また、日ごろの業務の中では得られることができない他社事例を学ぶことができ、自らの視野を広げることにも役立つ有意義なセミナーだと感じました。本セミナーで得た知識を活用し、弊社の製品信頼性向上の取組みに活かしていきたいと思います。

3.セミナー内容の詳細
時間 講義内容 講師・所属(敬称略)
10月30日(水)  9:50~10:00 事務連絡
10:00~11:30 第1章
「信頼性の課題と今後の方向性」
山   悟 富士ゼロックス(株)
12:30~14:45 第2章
「要素開発における信頼性の造り込み」
門田  靖 (株)リコー
15:00~17:15 第3章
「使用・環境条件にもとづく
信頼性の造り込み」
佐藤 廣幸 アイシン精機(株)
10月31日(木)  9:30~12:30 第4章
「製品設計における信頼性の造り込み」
岡本 直樹 (株)富士ゼロックス
13:30~15:30 第5章
「ハードとソフトの協調開発」
高橋 賢一 キヤノン(株)
1日目
<講義:第1章 信頼性の課題と今後の方向性論>

▲山悟講師 講義風景
▲山悟講師 講義風景

環境・市場の変化に伴う製品信頼性への課題とアプローチ方法について、富士ゼロックス(株)の山講師より講義いただきました。
私たちを取り巻く環境・市場の変化として「商品のライフサイクル」、「技術の進歩に伴う小型・軽量・多機能化」、「自然環境への配慮」、「製品の使用環境の多様化」、「組込ソフトウェア比率の増加」、「海外への生産・設計のシフト」、「企業の社会的責任(CSR)への関心」などを取り上げ、このような変化に伴って信頼性を確保することの重要性を実際の事故事例をもとに紹介いただきました。またこのような環境・市場の変化の下、現在の開発現場の実状況を踏まえ、信頼性を造り込むうえでのキーポイントを各企業における取り組み事例と共に紹介いただきました。開発期間の短縮を目的とした開発ステップの見直し事例や問題の先潰しによるフロントローディングの考え方などは、すぐにでも弊社に適用してみたいと思いました。
また経営トップの認識も重要であり、経営のトップが信頼性の作り込みの重要性を理解し自らはたらきかけながら明確な目標と戦略を持って取り組むことの大切さであるとのことでした。この点も各企業での取り組み事例を紹介いただき、その必要性・重要性を認識できました。

<講義:第2章 要素開発における信頼性の造り込み>

▲門田靖講師 講義風景
▲門田靖講師 講義風景

要素開発において着目すべき故障モードと要素開発における具体的な実施事例について、(株)リコーの門田講師より講義いただきました。
開発目標の設定にあたっては類似するデバイスや機能上の競合デバイス、対象商品群での使用デバイスを参考にするとよいとのことであり、弊社においてもこの考え方を展開したいと思いました。
要素開発にあたって特に着目すべき故障タイプは摩耗故障であり、摩耗故障領域を保証することが製品の耐用寿命を保証することになるとのことでした。そのためには摩耗故障モードに関して、故障物理的に考察し保証していくことが必要であることを学びました。
要素開発のステップをリコー様では「概念化開発」、「可能性開発」、「実用化開発」に分け、各ステップでどのようにして信頼性を作り込んでいくのかを紹介いただきました。この話は、弊社の各開発ステップにおいてどこまで信頼性を作り込むべきか考える上で非常に参考になりました。
講義の中で門田講師が「車載市場では1ppmの品質レベルが求められるが、1ppmの品質レベルというのは100万個のうち1個の不良レベルであり、出荷検査で止めることはできない。したがって設計開発者は、これくらいの品質レベルの製品を造れる工程を設計しなければならない。」とお話しされていたことがたいへん印象的でした。

<講義:第3章 使用・環境条件にもとづく信頼性の造り込み>

▲佐藤廣幸講師 講義風景
▲佐藤廣幸講師 講義風景

お客様の使用条件・環境条件や競合メーカの品質水準といった情報を、どのようにして設計開発へインプットし未然防止活動に結びつけるかを、アイシン精機(株)の佐藤講師より講義いただきました。
まず講義の始めにアイシン精機様における品質の考え方を紹介いただきました。品質至上の考えに基づき、パーフェクトデザインとパーフェクトラインによりお客様満足が高い商品を提供することに取り組まれているとのことであり、このような取り組みをされていることに深く感銘しました。
お客様の使用・環境条件をどのようにして設計品質に落とし込むかという話では、アイシン精機様での取組み事例として各国の道路状態を詳細に調査し、その調査データを基にテストコースをつくり製品評価していることを紹介いただきました。この話をお聞きし、お客様の使用・環境条件を把握することの重要性を認識することができました。
またお客様の使用条件・環境条件を品質の目標値へ落とし込むために品質機能展開を活用されていることを紹介いただきました。弊社においても品質機能展開を浸透させていきたいと思いました。
未然防止活動では開発プロセスにおけるやり直し体質を改善し、開発業務の質向上に結び付けて取り組まれていることを紹介いただきました。未然防止活動というと、市場や得意先様での品質事故防止という点にばかり目が向けられがちですが、社内の業務改善にも活用されているという話は非常に参考になりました。
未然防止にあたっては"見える化"が大切であり、アイシン精機(株)ではDRBFMを活用し設計の変更点、変化点を"見える化"しているとの紹介がありました。そのほかにも未然防止活動のツールとして、FMEAやFTAなども紹介いただきましたが、いずれもツールを活動する場合においても形式的な実施にならぬよう、"設計者が有用と感じるような仕掛けが必要"とのことであり、弊社へ展開する場合もその点に留意し進めていきたいと思いました。
今回、講義終了後に「設計者の信頼性に対する意識を向上させるためのコツは何か。」を質問させていただきました。これについてアイシン精機(株)での実施例として「不具合事例の展示会を行ない、設計者に信頼性の重要性を実感してもらう。」や「展示会ではトップから設計者に対するメッセージを送ってもらう。」といったことや、「不具合を見える化する。」、「設計者自らが直接お客様の声を聴きにいく。」ことを教えていただきました。そして何よりも、このような取り組みを"繰り返し行なうことが大切"であるとおっしゃっていたことが印象に残っており、私もこれを肝に銘じて粘り強く取り組んでいきたいと思いました。

2日目
<講義:第4章 製品設計における信頼性の造り込み>

▲岡本直樹講師 講義風景
▲岡本直樹講師 講義風景

製品の弱点を理解した上で信頼性設計を行うこと、製品設計段階における信頼性の造り込みについて富士ゼロックス(株)の岡本講師より講義いただきました。
講義の始めに近年の自動車のリコール問題に触れ、リコール不具合の40%強が信頼性に関連する問題に起因していることをお聞きし信頼性確保の必要性を再認識しました。また原因別にみると「評価基準の甘さ」や「使用環境条件の甘さ」に起因するものが多く、お客様の使用条件・使用環境を適切に把握し、信頼性設計へ反映させることの大切さを実感しました。 不具合を部位別に分析した場合では「接合、結合部位」が多く、材料面で分析した場合では「ゴム、プラスチック」の不具合が多いとのことであり、弊社で設計検証を行う際には、この点に注意を払っていきたいと思いました。
商品設計においては設計の後半になるにつれ評価のウエイトが増大しているとのことであり、問題発見のプロセスをフロントローディング化し、製品開発期間の短縮と開発生産性を向上させる(設計手戻り削減)ことが大切であることを教えていただきました。弊社においても開発の初期段階で課題の洗い出しを行い、不具合の未然防止、開発生産性の向上を図りたいと思いました。
最後にノウハウをデータベース化しこれを再発防止に活用する事例として、富士ゼロックス(株)での「紙づまりゼロ」への取り組みにデータベースを活用した事例をご紹介いただき、データベースの重要性を認識することができました。

<講義:第5章 ハードとソフトの協調開発>

▲高橋賢一講師 講義風景
▲高橋賢一講師 講義風景

組込みソフトウェアの現状の問題点と信頼性の向上に向けた取組みについて、キヤノン(株)の高橋講師から実例に沿って講義いただきました。
講義前半ではソフトウェア開発者の抱える課題や、一般的に考えられているソフトウェアに対する誤解などを説明いただきました。「ソフトウェアのハードに対する優位性は量産性だけ。それ以外に要する手間はハードと一緒。」という話や「ハードは変更できないからソフトでカバーと言われるが、ソフトも変更は容易ではない。」といった、正にソフトウェア開発者の生の声を聞けたことは、日ごろソフトウェア開発に関わったことがない私にとってとても新鮮でした。
ソフトウェアの信頼性向上にあたってはハードとソフトの協調が効果的であり、キヤノン(株)のMFP(デジタル複合機)での実例をご紹介いただき、理解を深めることができました。一方でソフトウェアの信頼性向上の特効薬はないので、タイミングチャートやダイヤグラムなどの図表を用いることで見える化し、ハード開発者との協調を図ったり、シミュレーションを有効に活用して低コスト・手短期間で信頼性を造り込んだりすることの大切さを教えていただきました。弊社においてもソフトウェア開発者と協力し、このような手法を浸透させていきたいと思いました。

お問い合わせ先
教育推進部 第一課 TEL:03-5378-1213 FAX:03-5378-9842
E-Mail:tqmsemi@juse.or.jp

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