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人間の感覚を利用した測定データにおける二つのタイプ<2015年09月17日>

■人間の感覚を利用した測定データにおける二つのタイプ


現在、市場調査で当たり前のように人間の感覚を利用した測定データ(以下、人間のデータ)を扱うようになっています。商品開発の現場でも、市場のデータを参照し、市販するかどうかの判断にも使われています。官能評価(人間の感覚を利用した測定の総称)が官能検査(品質管理の一部門で出荷検査として担っていた)と呼ばれていた時代でも、市場動向をどのようにとらえるかについては課題とされていました。1970年代後半からの商品開発への応用の過程で、市場のデータをとらえるための方法論が整備され、単なる検査だけではない、より上流の部門を守備範囲として扱うようになって、官能評価と呼ばれるようになっています。今では、「開発~試作~量産~出荷検査~市場での評価~製品改良へのフィードバック」という一連の流れの中で、官能評価が使われるようになっています。
ただし、これまでの研究蓄積の中ではっきりしているのは、人間のデータには二つのタイプがあるということです。それは、「訓練を経た専門家によるデータ」、そして、「特定の能力を仮定しない一般の素人」、この二通りの人間によって測定されたデータの性質には違いがあり、同じ処理ができないということなのです。

■何が違うのか
一例をあげてみましょう。ビールA、ビールBと2種類のビールがあったとします。この2種類のビールの「味の良さ」を比べて、優劣をつけるとします。その時、社内にビールの風味評価の専門家がいた場合には、それほど苦労はしません。ただし、市場で優劣を判断する場合には、素人相手の評価としてまず第一に考慮すべき点があります。それは、人間相手の評価には「順序効果」が生じてしまうということです。あるいは、ビールの「提示順の効果」が発生し、要するに最初に飲むビールの方がうまい、とされてしまう傾向があるのです。
この順序効果をどのように処理するかということについては、専門家は訓練の結果として、ある程度「順序効果」を超えて(自分で調整して)優劣を出すことができます。が、それでも、程度問題で、2種ではなく、3種以上の評価になると、実験の工夫が必要になります。
順序効果を相殺する方法を使えばよい、ということを実験計画法で知っているかもしれません。ただし、アルコールによる「酔う」ダメージに対して評価し続けることが可能なのは、やはり訓練した専門家しか無理でしょう。
では、どのようにして素人相手に結果を出すことができるのか。ここではアルコールの例をあげましたが、実際の試料提示順の影響、つまり先の試料が後の試料に影響を与えるという残存効果については、ほとんどの官能評価の対象となる行動、つまり飲む・食べる・かおりを嗅ぐという実験で生じることなのです。

■人間のデータをどうやってとるかという実学の歴史
結局のところ、官能評価は人間のデータをどのように扱えばよいかという、現場での問題解決の歴史であったと思います。
だから、どのように計算機が進歩しても、ソフトウェアが進化しても、結局人間が評価するわけだから、その官能評価の目的に対して、できるだけ適切なデータの取り方をすることが必要になります。というより、特に最近システムを入れてデータをルーチンワークで取るような方向に流れているような傾向を感じますが、測定時に処理しきれていない「人間の問題」が結果をゆがめている可能性があるのです。よく警鐘として、「データは取ったら終わり」とか、また、計算機の世界でも「Garbage In、 Garbage Out」(Garbageとはどうしようもない野菜のくず:つまり、コンピュータにクズのデータを入れたら、クズの結果が出てくる)と先輩方から言われてきたことです。

では、どうやって人間相手にデータを取ればよいか。この問題に対して、現場で今使われている方法論を扱うことを日科技連・官能評価セミナーの主眼としています。


参考文献:井上裕光 「官能評価の理論と方法―現場で使う官能評価分析」、日科技連出版、2012年
 

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Profile

      井上 裕光
  (千葉県立保健医療大学)

愛媛県生まれ。東京都立大学人文科学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学。現在、千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科教授。1990年より(一財)日本科学技術連盟官能評価セミナー運営委員長。1995年より日本官能評価学会常任理事。JIS官能評価分析策定に作業部会として関わり、2003年よりISO/TC34 SC12(官能評価)国内対策委員。2010年専門官能評価士。
 専門分野は、心理学(発達心理学、数理心理学、データ解析)、官能評価分析、人間工学(ヒューマンインタフェイス)、教師教育などで、人間が評価すること全般に関心がある。

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