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62.品質管理セミナーベーシックコース受講のおかげ<2023年02月03日>
桃山学院大学
経営学部 教授 山田 伊知郎( 62BC ・ O 修了)
経営学部 教授 山田 伊知郎( 62BC ・ O 修了)
大学を卒業し、製薬企業に勤め始めて3 年ほど経過したとき、企業で生き残るためには自分にも何か特徴が必要だと感じていた。当時私は生産現場にいたので、かつて少し興味があって、かじった程度の知識しかなかった統計学をもう少し学んでみたいと思った。 26 歳だった。当時の上司に企業内のコースに参加したいと申し出たが、すでに定員に達していて無理だった。そこで、当時の上司の計らいで日本科学技術連盟のベーシックコースに行かせていただいた。
今から35年も前のことだが、当時のことはよく覚えている。一ヶ月目は、大体知っていることだなと、余裕で講義を聞いていた。
しかし、二ヶ月目、三ヶ月目になると知らないことが増えてきて、それ以降かなり真剣に聞かないとついていけないと思うようになった。と同時に、あと3ヶ月、2ヶ月でベーシックコースが終わってしまうと思うと、残念な気持ち、もっと勉強していたいという気持ちがわき出てきた。新しい知識を得ることがとても楽しかったことを覚えている。先生方は素晴らしく魅力的だった。
班別研究会で私を指導してくださるかたは、岩崎日出男 先生(現 近畿大学 名誉教授)に決まった。たぶん、岩崎先生のベーシックコースでの最初の受講生だったと記憶している 。当時会社から与えられた私の研究テーマは、「 T 錠の崩壊時間の短縮」というものだった。製薬工場で薬を作りながら研究するのだから、もし製造が失敗すれば大損失になるに違いないけれども、今から思うと会社もいろんなことをやらせてくれた。
T錠は、主成分が水に溶けにくく、しかも重量比でみるとかなりの部分が主成分からできている。つまり、溶けにくい。薬が胃の中で崩壊しないと、そのまま排泄されてしまい、薬が効かないということになってしまう。いかにして胃の中で薬が水分を吸ってバラバラになってくれるかが大事だった。いろいろと分析した結果、複数のロットごと 私たちはシリーズと呼んでいた に崩壊時間がばらつくことが分かった。結局シリーズごとに条件が変化する場所、すなわち主成分の粉砕工程の条件が原因であることが判明した。微粉砕しすぎないこと 機械の原料送りのスピードを上げることで崩壊時間を短縮することができた。水に溶けない主成分間の隙間を確保し、錠剤に水を浸透させることが大事だった。
わかってみれば当たり前のことだった。最後は、職場でも成果発表を行った。それ以降、毎年工場や品質管理部門から毎年一人ずつベーシックコースを受講するようになった。
ベーシックコースを受講した後、分散分析の計算をするプログラムを作ったりしていたが、しばらくして生産現場を離れ、薬の分析などをする製品開発の部署に移った。私は分析はできないが、分析の計算プログラムや報告書作成システムを開発する仕事をし、さらに情報システムの部署に異動した。今になって思うと、ベーシックコースでの学習が私の企業の中での生き残り策だったのだとわかる。
私は製品開発に移った後も、統計の勉強は続けたかった。そこで、当時の上司にまた相談した。その上司の答えは、大学の経営学部に行ったら統計が勉強できるということだった。いわれたとおり、夜間の経営学部に行った。そこでは当然統計は学べなかった。それが今の仕事にはつながった。やはり、ベーシックコースのおかげで職につけていることを感謝している。若い人には、なにか人とは違う特徴を持ってほしい。それが役に立つことがある。
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