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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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56.私のBC受講を振り返って思うこと<2023年01月28日>

日科技連嘱託、元 NECファクトリエンジニアリング(株)
加瀬 三千雄(51BC・T修了)

 戦後、情報通信手段の主力である電話交換機(有線方式)は、国の政治経済を担う重要インフラと位置づけられていました。私は、日本電気入社後の1972~1998年の間、その電話交換機関連の品質管理・品質保証業務に関わってきました。当時の電話交換機に対する信頼性要求レベルは非常に高く、システムダウンが20年間で1時間以内であったと記憶しています。当然、品質要求レベルも高く、当時の日本電信電話公社の検査部は、交換機メーカに対して熱心に品質管理教育・指導をされていました。

 私の専攻は電気工学(数学の授業が多い)ですが生来数学が嫌いな私にはチンプンカンプンでした。たまたま隣の教室が統計学科だったので、授業が無いときは潜り込んでいました。その時感じたのが「統計は変だよ。“こう仮定するとこうなるからこういう結論になる”。そう仮定したのだから当たり前じゃないの?」という疑問でした。一方「おもしろいな」と感じていたのも事実です。品質管理部門へ配属された私も、電気通信工業会主催の品質管理入門他いろいろなセミナーへ参加させられました。そこでもどうしても理解できなかったのが“分散分析”でした。計算の仕方や手順は分かりますが、計算で得られたF値が大きいとき“有意である”という考え方の基本の部分が納得できませんでした。そこで社内の自主研修講座にも参加して実験計画法を学びましたが理解できません。講師(会社の部長)に直接質問しても理解できません。自分ながら情けなくなりました。

 2名の先輩は、規格協会主催の「標準化と品質管理」で優秀賞を取っています。次は自分の番なのに、オイルショック等による業績悪化で教育費削減となりました。教育予算が復活したとき「BCの予算が取れた」という会話を耳にして、自分から手
を挙げました。私には大きな色気があったのです。「絶対優秀賞を取って講師になる」。学生時代の非常勤講師(企業の人)の話に感動し、自分もやってみたいと思っていましたが、大学での非常勤講師はツテがありません。その代わりとしてBCの講師になりたいという目標を立てました。もう一つの理由は、今まで理解できていない分散分析の考え方を理解したいことでした。

 51BCを卒業して、53BCから班別講師を担当させて頂きました。当時は、ほぼ毎月のようにいろいろな勉強会が日科技連で開かれていて、多くの企業出身の先生方が後輩の指導に当たっておられました。BC講義ではなかなか聴けない業務の中での品質管理の使い方や、実験の仕方、誤差の考え方などBC講義の復習の場となっていたと思います。そのような折、飯塚悦功先生(東京大学 名誉教授)が発案者となってTQMを再構築するための有志による勉強会が始まりました。TRGと命名され、確か6つの分科会が設置され、その一つの分科会「TQMの実践」の主査を担当しました。
 ある程度のアウトプットを出すことはできましたが、最終的な形まで作り上げられなかったのは、私の力量不足によるものです。このTRGを通して全社的品質管理のあり方を学ばせて頂きました。

 1985年東北日本電気に出向となり、電子交換機の製造と品質保証を担当後の全社品質管理担当の時にデミング賞挑戦が決まりました。事務局として、各部門の品質保証の進め方を整理し、会社としての品質保証の進め方を再構築すると共に、実際に自分の会社でどのように実行しているかを体験することができました。更に品質改善事例を沢山作るために、多くの職場の方と一緒に問題解決に奔走したことは大きな経験となりました。このとき本当に品質管理、統計的手法、TQMの考え方を理解できたと思います。

 製造現場から外れて長いため、現状の姿が大きく変わってきています。班別研究会の場は、そのような現在のプロセスを知る良い機会となっています。また、最近持ち込まれるテーマは、単純な不具合の改善ではなく、新しい技術を開発したり、新製品の持っている潜在的不具合を摘出したりといった非常に高度な内容が多くなってきました。指導する側の私が、研究生から教育して頂いているようなものです。
 今、企業ではどのようなことをやっているのか、どのような問題を抱えているのか、どのような課題に取り組んでいるのかを知ることによって、私自身に対して更なる向上への努力が必要であることを痛感させられています。実際に自分が手を出してテーマに取り組むことができません。かといって研究生に解決方法を伝授することも難しいことです。なぜならば、当該テーマについての専門性が少ないからです。

 私は、テーマ推進に当たって、研究生自身にテーマの必要性、背景、目的を分析して頂き、そのテーマが解決できたときにどのような姿になっているかを描いてもらうようにしています。その姿に持って行くために何が必要かを一緒に考えることを通して、研究生自身が改善の糸口をつかむように方向性を示すのが班別の進め方と考えています。時々、具体的な解決方法を指導して欲しいという声もあります。
 しかし、素人の私が解決方法を提案した場合、間違った提案をする確率の方が非常に多いはずです。むしろ、テーマ全体を大きな目で見て判断し、先を予測していくこと。その予測には企業の固有技術が不可欠であることを班別研究会で研究生に学んで頂きたいと思っています。

 つまらないことを、長々と書いてしまいました。1977年にBCに巡り会ってから満40年が経ちました。BCを通して先輩諸氏から教えて頂いたことは、常に前向きな気持ちで、常に目標(あるいは夢かもしれません)を持って、新しいことに興味を持ち続けること、そしてダメで元々なので挑戦することです。最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 
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