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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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52.ベーシックコースとISO9001<2023年01月24日>

日本科学技術連盟・嘱託
篠原 健雄

 ISO 9001は、1987年に英国のBS5750がISO化されてISO 9001となった。日科技連では、その当時からQuality Systemとして注目し、ベーシックコースの事務局が中心となって、1992年6月にベーシックコースの講師にISO 9001の勉強会の実施を呼びかけ、約40名の講師が参加した。勉強会は、6月1日から5日の5日間コースで、英国より講師として、 DHA社(David Hutchins Associated Ltd.)を招いて講義を受けることになった。
 講義は英語で逐次通訳が付いたが、現在のISO 9001規格の日本語も難しいが、英単語をどう訳したら良いかも決まっておらず、英語より通訳さんの日本語が更に難しいこともあった。

 当時は、国内のISO 9001(品質システム)認証の黎明期であり、この研修会終了後、日科技連も審査登録機関になるべく準備を開始した。また、ベーシックコースの講師陣にアナウンスした際も「日本は、世界的に見て品質管理は進んでおり、今更ISO認証を実施しても、日本の国内にはあまり意味がない」といった考え方の講師の方も数多くいらっしゃったことを記憶している。研修
会の最終日にテストがあり、そのテストに合格した受講者が、ISO審査員としての資格をIRCAに申請するための書類を受領したこの当時(1992年頃)は、まだJAB(日本適合性認定協会)も発足しておらず、国内での審査登録の仕組みが明確になっていない時代であった。

 その後、JABが1994年に創設され、少しずつISO認証の仕組みが整理されていった。一方、規格も1994年に改訂版が発行され、国内でも、ISO 9001の認証取得が盛んになってきた。1994年から1997年くらいまでは、認証の仕組みができたといえ、かなり荒っぽいものであり、現在とは比べ物にならないほど、透明性がみられなかったこともあった。日科技連も、審査登録機関になるべく体制や文書システムを整え、JABの認定審査を受審して、1995年3月に審査登録機関となった。また、この間1996年にISO  14001(環境マネジメントシステム)が発行になり、ISO認証がブームになってきた。環境マネジメントシステムの審査登録機関となったのは、1998年7月であった。審査登録機関としての上級管理者に角田克彦氏、品質審査室長に川村数増氏、環境審査室長に有延友克氏という、そうそうたるメンバーが日科技連ISO審査登録センターの主軸として活躍していた時代であった。

 この当時は、最初に審査員になった40名の審査員が中心となってISO審査を実施していたが、そのころから徐々に講師以外の審査員が増加し、様々な専門性を有した審査員が増加し、日科技連のセンターとしても審査の幅が広がってきた。当時国内のISO 9001の認証取得企業数は、2000年に約15000社であったものの、2006年には40000社を越え、ピークになり、その後緩やかに減少している。理由は、組織によって異なるが、上述したように文書化だけをうるさく求められるような意識になり、認証取得している目的(品質向上と顧客満足度の向上)に結果的に結びつかなかったことが原因と思われる。そういった雰囲気を取り込んだかどうかは分からないが、2000年に発行された第3版は、それまでの品質システムから品質マネジメントシステムに名称が変わり、内容的にもプロセスアプローチを中心においた規格になった。

 この改訂によって、マネジメントとしての対応と品質目標を設定して実行する等、PDCAを明確にした規格要求になり、国内の組織の中でも、TQMやデミング賞に興味のある組織が、日科技連のISOセンターの審査を受けるという希望が増加し、他の審査登録機関にて登録している組織が、日科技連に移籍してくることが増えてきた。認証を受けようとする組織の審査機関の選び方としては、外資系審査機関のようにとにかく安いことで選ぶか、日科技連のように自社組織の品質マネジメントに有効な審査を受審することを選ぶかの両極端になってきている。

 昨年発行された2015年版は、品質だけと言わずに、事業全体のマネジメントに対する規格になっており、更に有効性が高い審査が要求されている。2015年版では、これまでになかった要求事項として「事業プロセスに関するリスクマネジメント」「組織の知識を明確にして利用できるようにしておくこと」、「変更管理」、「ヒューマンエラーの撲滅」等が要求されており、これまでの
考え方を整理する上でも有効に利用する組織が増えることを期待したい。

 
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