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49.統計教育の重要性<2023年01月21日>
株式会社赤福 品質保証部 部長
田中 達男(50BC・O修了)
田中 達男(50BC・O修了)
1.品質管理とのかかわり
小生が大学院生であった1976年10月、恩師宮下先生のご推薦を頂き、大阪で開催されたベーシックコースを書記として受講させて頂きました。
大学の研究では実験計画法(3水準直交配列L27)を使っていましたが、当時のデータ処理はまだ電卓を用いての手計算が主でした。コンピューターはまだ一般的なものではありませんでしたが、特別にFORTRAN言語を用いたコンピューター処理もご指導いただき、パンチカードにプログラムとデータを打ち込んで処理することも経験させていただきました。
企業に勤めてからは、縁あって品質管理を担当することとなり、QCサークル活動の推進、方針管理の事務局、社内標準化の推進、ISO9001の認証取得などを経験しました。今は第一線を退いて後進の育成に注力しており、試験・実験を行ったときの有効性の評価方法などの指導も日常的に行っています。
2.情報リテラシー
現在の我々の社会はICT(情報通信技術)の劇的な進歩によってインターネット社会が形成され、グローバル化も急速に進んでいます。一昔では考えられなかったさまざまな種類の膨大な量の情報入手が可能となり、これを分析、活用して意思決定することの重要性はますます大きくなってきています。また演算処理速度も格段に速くなり、数々の統計処理ソフトも身近になり、統計学を活用するための環境が整ってきています1)。膨大な量のデータを正確に処理し、適切な判断を行うために統計知識の重要性が増してきており、これが適切、有効に活用、推進できているか否かで企業活動内容も異なり、経済効果でも大きな差が出ています。
しかしながら、日本は大学に統計学科を置いていない数少ない国である事実からも解るとおり、我が国の統計教育は諸外国に比べ必ずしも進んだものにはなっていません2)。
また一方では統計量を使って意図的に誤解させる事例も発生しており、詐欺まがいの犯罪も起きています1)。「グラフでうそをつく方法」などは多く知られており、統計リテラシーがないと偏見や意図的なごまかしに騙されてしまいます。必要な情報を認識し、効果的に抽出、分析、評価して利用・解決するスキルを身につけ、作為的な情報に惑わされることなく正しい判断をするための教育・訓練が必要なのです。
因みに筆者は宝くじを買いません。当選金額の期待値があまりに低いからです。そもそも宝くじは地方財政資金の調達に資することを目的としており、その期待値は5割を超えないことが法律で決まっています3)。従って地方自治体への寄付行為が目的で宝くじを購入するならよいのですが、テレビCMに煽られ一攫千金を夢見て購入するのなら、それは文字どおり夢に終わってしまう可能性が高いのです。
3.品質管理セミナーベーシックコースの役割
多くの優秀な品質管理エキスパートを輩出している日科技連のベーシックコースは、わが国で最も伝統と実績のある品質管理の本格的なコースで、指導体制、研修プログラム、講義内容の充実ぶりを見るに、最高の品質管理セミナーであることは疑う余地がなく、日本統計教育賞を受賞したことも当然であるといえます。
とりわけ、企業における実際のデータを基に情報処理の考え方や手法を学習する「班別研究会」では、同セミナーの講義や演習を通じて習得した品質管理の考え方や様々な手法を、自社における身近でかつ重要な品質問題の解決に活用して効果を上げるための方法を研究します。セミナーの受講期間(6か月間)は一貫してその研究を行うので、みっちりと実力を養うことができます。今後このセミナーの重要性はますます高まり、技術者の登竜門としての存在価値を深化させていくことと確信しています。小生もベーシックコース講師陣の末席を穢しているわけですが、受講生が品質管理の習得を通じて情報リテラシーを身につけ、大いに活躍されることを期待しながら指導しています。
1)野口博司「基礎から理解する統計学 第1回統計学の必要性」標準化と品質管理Vol.68 No.10 pp.49-55
2)慶應義塾発行 三田評論2014年11月号No.1183「特集 統計学が未来をひらく」p17
3)当せん金付証票法 第5条(当せん金付証票の当せん金品の限度)
〈お問い合わせ先〉一般財団法人 日本科学技術連盟 品質経営研修センター 研修運営グループ
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