BC
48.BCを振り返って<2023年01月20日>
株式会社日本ネットワークサポート 品質保証部長
小川 裕(68BC・O修了)
小川 裕(68BC・O修了)
ベーシックコース(BC)の講師として日科技連殿にお世話になり、気づくと早30年が経っていました。
これまでは前ばかり見て後ろを振り返ったことはなかったのですが、今回「BC-News」を執筆する機会をいただき、改めて過去を振り返ってみますと、今となれば懐かしい思い出がいろいろと頭をよぎってきました。
■BCとの偶然の出会い
私がBCを受講するきっかけとなりましたのは、当時在籍していた親会社がその前にデミング賞実施賞を受賞し、今後とも社員の品質管理能力の維持・向上を図っていくための一つの手段として、限定的ですが社外教育を受けさせることになったからでした。そして当初このBCは他の人が受講することになっていたのですが、仕事の都合で辞退したため、急遽私にピンチヒッターが回ってくるという、全く予期せぬ事態が生じたのでした。
もともと当社には「実務スタッフ養成コース」といって、活動期間は半年間でそれぞれ部門毎に1チーム数名程度のプロジェクトチーム(PT)を編成し、各部門の重要課題をテーマにあげ、QC的アプローチ等を駆使し改善を図っていくという、「BC班別研究会」の規模をもっと大きくしたような活動の仕組みがありました。
ところが、一度に活動できるPT数が限られていたため、その代替手段として所属長が品質管理教育を是非とも受けさせたいと判断した社員には、別途社外教育を受けさせたのでした。
私としましては、これまで社内TQC活動の一担当者として関わってきましたが、例えば、現場で直接統計的手法を駆使したような実践的改善活動の経験がなかったものですから、いざ受講に当たっては非常に困惑しました。
まず最初に困ったのが、当時第一月目の初っぱなに行われた“ST”でした。これは後で分かったことですが、他社の受講者のなかには、過去に受講した人からST情報を事前に入手できるというアドバンテージがありましたので、これは「不公平」だなぁと思いました。私の場合は全くそういったものはなく、品質管理全般の知識も不十分だったので、事前に何をどこまで勉強してよいのか雲を掴むような話であり、行き当たりバッタリで試験に臨みましたが、その結果は散々たるものでした。以来、個人的には第一月目のSTについては実施日を見直すべきだと思っていたのですが、いつの間にか第二月目から行うように変更されていましたので、受講生からすれば少しは気が楽になったのではと思っています。
半年間のコースでしたが、その間は会社の仕事も大変忙しい時期でしたので、受講後に会社に戻っては本業を行い深夜帰宅するのが日課となり、おまけに時間のかかる「宿題」も付きまとって、とても過酷で辛い時期が続きました。
特に「班別研究会」につきましては、会社としての大きな改善課題をテーマにあげ、何としても期間中に完了させる必要がありましたので、当時班別指導講師でありましたY(武田薬品)先生のご指導のもと必死に取り組みました。その際にいろいろな統計的手法等を実践で繰り返し活用したことが結果として大きく身につき、その後の自分に非常に役立ったと思っています。
また報告資料につきましては、他の人に容易に理解してもらえるよう如何に上手く纏め上げるかを真剣に考えました。それが功を奏したのか幸運にも「班別研究発表代表」に選ばれ、中央電気倶楽部の講堂(当時)で発表させていただきました。
統計的手法をはじめ品質管理に必要な手法は数多くあり、これらを座学のみで勉強してもすぐに忘れてしまいがちですが、なかなか教科書通りにはいかない「実践の場」で繰り返し使い込むことで深く身に付いていくものですので、是非皆さん方も実践で活用する機会を多く設けて、その維持・向上に努めていただけることを願っております。
苦しかったBCもやっと終了しホッとしたのも束の間のある日、当時日科技連大阪事務所の柳谷氏(故人)がBC班別研究会の講師依頼のために来社されました。最初は分不相応でお断りするつもりでしたが、結果としましては一抹の不安を感じつつもお引き受け致すこととなり、そして現在に至っております。
■「班別研究会の改善活動」への参加(班別研究指導評価WG)
これは班別研究会での直接の講師活動ではありませんが、事務局からの依頼で、S氏、T氏と私の3人で、従来の班別研究会の実施方法に対する問題点改善のためにWorking Groupを組み、それぞれ役割分担のもとに取り組んだものでした。
私は、「テーマ選定チェックリストの活用(97BCより実施中)」について担当しましたが、これは班別研究会で取り組む「テーマ」を選定する際に、そのテーマが適切なものかを受講者側で事前に「チェックリスト」に基づいて評価し、また第一月目の班別研究会時に指導講師側でもそれを再チェックすることにより、適切なテーマ選定となるようルール化したものでした。
このリストを活用するようになってから、私の場合は受講生数名の方に「テーマの見直し」をお願いいたしました。「チェックリスト」内の項目のうち、特に「分析データは容易に取れるか」、「効果の見極めは可能か」は重要ポイントであり、「海外向けOEM製品のため現地での不具合実態の詳細把握が困難」、「外注先任せになっていて自社の介入が困難」などの理由で、班別研究会で十分な改善活動が期待できないと判断したからでした。
このように「テーマ選定チェックリスト」の活用は非常に有効だと思っていますので、過去にBCを受講された皆さんにおかれましては、今後知り合いの方がBC受講で「班別研究会テーマ」を選定される際には、チェックリストの各項目に従って“確実にチェック”していただけるよう、ご指導、助言をお願いしたいと思います。
■最後にBC受講生へ
班別研究会の講師を長く担当させていただいているなかで、受講生に対し常に言ってきたことがあります。それは、「QCストーリーの重要さ」についてです。BCでは、どちらかというと各種統計的手法(実験計画法、他)の習熟に目がいきがちです。当然それらは重要なものですが、例えば統計的手法を駆使して「ある検証事項(特に重要なもの)」が「有意判定」になったからといって必ずしもそれが採用されるとは限りません。それはあくまでも経営判断により最終決定されるものですので、経営層が納得し承認しない限り前へ進めることはできません。
ご承知の通りQCストーリーは、例えば問題解決型の場合なら、「テーマ選定」、「現状把握」、「解析」、「対策の検討と実施」、・・(以下省略)といった具合に所定の手順に従って展開していくもので、職場のQCサークル活動などで活用されていますが、これらを工夫することで経営層に対して重要案件等を説明し承認を得るための有効なToolとしても使えるということです。即ち実施したい案件等をオーソライズする場合に、それをQCストーリー(統計的手法等も駆使して)的に“上手く”纏め上げることで経営層への説明が容易となり、また相手もその内容を理解し易くなりますので、そういった際の「説明資料」などにこれを有効
活用していただければと思います。
まとまりのない文書になりましたが、最後にBC受講生として今後の更なるご活躍をお祈りします。
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