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46.ベーシックコースと管理図との出合い<2023年01月18日>
株式会社岩崎電機製作所 品質保証室 室長
川西 哲詩(86BC・O修了)
川西 哲詩(86BC・O修了)
私がベーシックコースを受講したのは、もう30年も前のことでしょうか……
初日に簡単な品質管理に関する数学(統計)の確認テストがあったのですが、統計といえば、当時、高校の数学でも受験に関係ないからと授業からも割愛され、大学(理学部)の教養過程でも専門課程でも受けた覚えもなく、縁のない学問でした。ですから、その結果は、散々なものだったと思います。セミナー開始直後から「えらいこっちゃ……これでは、会社に戻れない」という危機感が芽生えました。ですから、毎日、必死で勉強した記憶があります。たぶん、生涯で一番、勉強した時代でしょう。(まあ、正直、学生時代に勉強しなかっただけかも知れませんが)
その講義の中、「QC 7つ道具」の「管理図」との出合いがありました。いままで受けてきた講義と違って、とても易しくわかりやすい内容でした。特に印象的だったのは、誤る確率0.3%と言う事について先生が自信を持って話をされていたことです。こんな簡単に書いたグラフなのに??
「ほんとかな?」疑い深い私は、当時、個人が使えるパーソナルコンピュータというものが世の中に出始めておりましたが、安月給の私も、手に入れることができ、この確率を確かめるというのが、私にとって最初のパソコンとの出合いとなりました。(当時は、自分でBASICという言語を使って、プログラムを作るしか手がなかった時代です)
日科技連より正規分布の「チップ」(おはじき)を借りて帰り、このおはじきを使ってn=5で10万回のランダムサンプリングを繰り返す仕組みを模索しながら作り上げました。そこで得られた結果は、私には、衝撃的なものでした。0.269%の管理限界線外れ。「こんな簡単に書かれる折れ線グラフなのに……」(正規分布表を引くと、正しくはu=3(3σ)は、片側で0.0013499ですよね)
その日をきっかけに班別研究会でもこのパソコンを大いに活用しました。この時、指導いただいた先生は、当時、阪大の永田靖先生(現:早稲田大学教授)でしたが、思う存分自由に、このパソコンを使って、研究会のテーマをやらせていただきました。そして、ベーシックコースの終了と共に、職人がやっていた製造工程の練合終点管理(製薬)を自動化へと導いて下さいました。(その管理図を使って進めた成果です)
「QC活動の成功体験は品質管理を続ける原動力になる」故花田憲三先生が話して下さった言葉ですが、まさしくその通りで、ベーシックコース終了と共にSQC部会のメンバーに加えていただき、今日の日科技連の講師としての出発点となりました。
また同時に、ベーシックコースとの出合いが、以後30年続けている自動制御、自動検査装置の開発に結びついています。
昨今、その検査を行ったデータに基づきSPC (Statistical Process Control)という手法で工程を管理するということを盛んに行っておりますが、元を返せば、あの日、あの時に習った、管理図による工程管理にほかなりません。
高校時代の担任だった数学の先生が「数学を勉強しても統計だけは将来、使わないと思うよ」と言われたあの時代から、40年以上の月日が流れました。
今、私は、その数学の統計をベースとした品質管理・工程管理を40年やっています。
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