BC
42.雑感:講義の難しさ<2023年01月14日>
玉川大学 経営学部 国際経営学科 准教授
永井 一志 (78BC・T修了)
永井 一志 (78BC・T修了)
自身が書記として参加させていただいたBCを振り返ると、実に話が巧みで時間の経過をとても早く感じた講師の記憶が鮮明である。講義中に冗談や例え話を交えながら、難解な事項を平易に説明してくださるスタイルに共感し、さらには学ぶこと自体が楽しく思える相乗効果もあった。もちろん、講師は漫才師ではないから、楽しい講義だけが全て良いという訳ではない。時には難解な式で物事を理解しなければならないことも承知しているが、“マーケット・イン”という言葉があるように、お客様である受講生の心理をくみ取りながら講義を提供していたあの講師に少しでも近づきたいと思っている。
現在、私が担当するのはSQCに関する内容ではなく、どちらかというと概論の性格が強い、いわゆる“お話しもの”の単元である。テキストにしたがって忠実に講義をすると受講生に睡眠薬以上の効果を与えてしまう内容かもしれない。だからこそ、事例やテキスト以外のトピックスを用いて受講生が関心をもってくださるように、また会社へのお土産となる話題提供の工夫にとても苦
労している。
そんな中、ある回のセミナーでアンケートの評価が良く、表彰をいただいたことがあった。セミナー受講中は劣等生であった私が少しでもあの時の講師に近づく事ができたのかもしれないと、とても嬉しい気持ちであった。しかし良いことばかりではなく、同じ内容の講義を同じ話し方・同じスタイル(いわゆるバラツキを最小としたやり方)で行っているにもかかわらず、受講生からは逆にお叱りを受けてしまう時もある。
バラツキの少ない商品をお客様に提供しているつもりなのに、厳しい評価をいただくのはなぜか、講義の難しさを改めて考えさせられるこの頃である。
品質管理で学ぶ設計品質(ねらいの品質)と製造品質(できばえの品質)という概念を用いると、製造品質はそれなりのレベルになったといえそうである。
しかし肝心の設計品質がお客様の要求と乖離してしまっては、顧客満足につながらない。基本的にBC受講生の属性に大きな変化はないから、その他の性格や資質面での違いが評価に現れるのであろう。少しずつではあるが、母集団である受講生の特徴が時代と変化しているのかもしれない。したがって、いつまでも自身の講義に満足せず、常にお客様の変化を見抜くアンテナを張り、設計品質のレベルアップを図ることが我々に求められていると感じる。「顧客ニーズの解析と管理」の単元を担当する者がこんな事をいうのは滑稽であるが、改めて自身がワクワクしながら講義を聞いたあの時の講師に近づきたいと思う。これは研究と教育を職とする私にとって永遠の課題である。
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