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TQM(品質・改善・とマネジメント)
TQM

企業の立場でTQM推進を思う―推進事務局の体験から―(6)<2016年01月26日>

■方針管理の仕組みを強化する
① 方針管理の重要性を再認識し,その強化に取り組めるようにします。
 方針管理とは「経営基本方針に基づき,長(中)期経営計画や短期経営方針を定め,それらを効率的に達成するために,企業組織全体の協力のもとに行われる活動」と言っています。
 経営方針・経営目標を定め,これを効率的かつ効果的に達成する仕組みが「方針管理」です。
 当社(最初の会社前田建設)でもTQM導入以前から,売上・利益など業績目標の達成のための仕事は経営層の役割として実施されてきましたが,特に仕組みらしきものはありませんでした。PDCAの考えもなく,目標未達が当たり前の風潮がありました。
 その後「方針管理」の活動がグループ会社内にも徐々に浸透しましたが,会社間のばらつきは否めませんでした。
 前号で紹介しましたが,機能別WGの「方針管理」に社長自らの参画により,方針管理の仕組み強化に取り組みました。


② 「方針管理の仕組み」の現状を明確にし,その改善を実践できるようにします。
 前号の図17の「TQM推進重点活動抽出表(方針管理)」を作成し,図18の「重点活動計画(方針管理)」によって「方針管理の仕組み強化」に関する活動内容を明確にしました。
 この活動結果は,他の機能別活動と併せて毎月の「TQM指導会」で発表し,講評・指導・フォローアップを得る仕掛けです。
 この仕掛けの成果でしょうか,仕組みの強化が比較的うまく進捗しました。図22にデミング賞受審時の「方針管理体系図」を示します。


③ 経営理念のもと長期的視野に立った「経営ビジョン」を明確にします。
 当社の経営理念(社是)は「誠実・意欲・技術」です。最初の「誠実」には“事業をやっていくからには儲けなければならない。だが儲けることばかり考えていたのでは事業は長続きしない,取引先との心の触れ合いがあってこそ事業は永続し発展する。誠実が事業の根本である”ことを全員で再確認しました。
 将来を見据えた経営ビジョン示す必要があります。経営会議などで経営方針を討議するにあたっては,経営層が現状経営環境について共通の認識を持った上で方針のベクトル合わせが必要になります。図23に「経営戦略立案シート」を示します。

 余談ですがこのツールは,「TQM奨励賞」における「経営課題」の明確化に該当し,ISO 9001:2015の4「組織の状況」の要求にも十分に応え得るものです。


経営ビジョンを「中期経営計画書」により具体化し,年度方針に展開します。
 前号の図19「中期経営計画書」を策定しました。3ヶ年先の経営目標(業績目標など)の到達点を明示し,それを達成するための「経営課題と重点施策」を明確にしました。経営会議における総意の結果です。
 さらに,「中期経営計画書」の重点施策について,年度別の具体的事項を部門別に展開しました。それを図24「重点施策の具体的事項と部門別展開」に示します。


年度ごとの社長方針に従い,各部門で「実施計画書」を策定します。
 前号の図21に「社長方針書」の一部を示しました。方針=目標+方策です。
 また,方針管理は「現状打破の活動」ですから,目標値は常に挑戦的なもので,そこそこやれば達成できるような目標では意味がありません。
 したがって,この目標達成のための方策(手段)は,従来のやり方の踏襲では達成できないはずです。従来のやり方を変えるすなわち「改善活動」が伴うものです。従来のシステムの改善・再構築や新たなシステムの導入,組織・管理体制の見直しなど,会社の状況によって様々です。
 目標達成のための方策の吟味がより重要です。このことを職位の上下間で「すり合わせ」をしっかり行って「具体的実施事項」(方策)を決定します。そのときのツールが図25の「方針整合マトリックス」です。
 このような検討をしっかり行った上で,図26に示す「実施計画書」を策定し決定します。
 「具体的実施事項」の表現がポイントで「○○により△△の××を図る」と記述します。“○○により”が方策・手段を示しています。“△△の××”が目的・効果を示し,その評価指標として「管理項目」と「目標値」が設定されています。また「アウトプット」欄は“○○により”を実施した成果として期待できる新たな管理ツールなどを記載しています。



図22 方針管理体系図
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)

 



図23 経営戦略立案シート
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)




図24 重点施策の具体的事項と部門別展開




図25 方針整合マトリックス




図26 実施計画書
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)


 
⑥ 目標達成のための業務改善にしっかり取り組み,確実な効果が得られるようにします。
 前述しましたように会社方針・挑戦的目標を達成するためには「改善活動」が不可欠です。「具体的実施事項」に対して「改善テーマ」を設定し,「改善目標」の中で“管理項目・現状値・目標値”を示しています。
 部門間に亘る問題としたテーマであれば,部門代表で改善チームを編成します。図27に「改善テーマ設定書」を示します。
 この改善結果も毎月の「TQM指導会」で発表し,講評・指導・フォローアップを得る仕掛けです。

 これも余談ですが「TQM奨励賞」でも,「経営課題を明確にし,この達成のための改善活動を実施して標準化と日常管理で維持する」ことが審査視点になっています。


⑦ 部の「実施計画書」の活動を実施し効果を得るためのPDCAを確実に回せるようにします。
 実施計画書で定めた「部の具体的実施事項」に対して,管理項目の目標値対する実績値を示し,方策・手段の実施内容を記載します。目標が未達の場合は特に,実績値と方策・手段の実施内容を対比して反省・問題点を明確にして翌月の計画に反映します。
 もし,「部の具体的実施事項」(方策・手段)を徹底してやったにも関わらず,目標が達成できなかったとすれば,計画で定めた方策・手段が有効でなかったことになり,このときのActは方策・手段を見直すことになります。以上のことを月次でPDCAを回し,フォローアップするツールが図28の「活動フォローアップ書」です。


⑧ 経営方針の達成活動を経営層が自ら診断してフォローアップできるようにします。
 図22「方針管理体系図」の中で「社長診断1~3」を定め,実施しました。社長診断1で,新年度の開始にあたり各部「実施計画書」の適切性・有効性を確認し上下職位間の「すり合わせ」を行います。
 社長診断2は上半期の活動状況を,社長診断3は通期の活動状況を診断し,次計画に反映するものです。
 社長診断の指摘に対しては「改善計画・実施報告書」により,改善が実施され3か月後の時点で報告されます。
 特に社長診断3は,1年間を通した活動状況を評価し課題を明確にして次年度の経営計画に反映する重要なプロセスです。
 そのときのツールを図29の「方針管理期末反省書」に示します。部の「具体的実施事項」の項目ごとに作成し,目標値の実績推移と主な改善内容・具体的成果を記載します。これを基に反省と残された課題,次年度への課題を明記します。
 ポイントは,計画で決めた目標達成のための方策・手段が有効であったのかを検証して,より効果的な方策・手段を考えて目標の達成度を年々向上させることです。また,改善内容,問題点の解析,具体的成果を認識することは「改善活動の効果」を見ることになります。


⑨ 方針管理活動の成果をまとめ,残された課題の明確化と共に次の活動にスパイラルアップできるようにします。
 機能別の「TQM重点活動」ごとに活動の経過と充実した仕組み,効果をまとめ,今後の進め方を定めました。
 方針管理の重点活動の一部を図30の「重点活動の成果(方針管理)」に示します。デミング賞受審時の重点説明資料に使用したものです。

 

図27 改善テーマ設定書
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)




図28 活動フォローアップ書
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)




図29 方針管理期末反省書
出典:「品質経営システム構築の実践集」(細谷,西野,新倉共著)




図30重点活動の成果(方針管理)



次号は「TQM重点活動」の内の品質保証関連の活動について記載します。

 

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Profile

      西野武彦 氏

1946年生まれ
1964年前田建設工業株式会社入社/以来,建築施工,TQM推進に従事
1989年同社デミング賞受賞
以降,グループ共全四社のデミング賞受賞,そのTQM推進事務局に従事, JSQC第1回品質管理推進功労賞受賞
現在,日本品質奨励賞審査員,ISO審査員(QMSエキスパート審査員),
品質管理学会員,TQM・ISO研修コース講師,一級建築士
著書:『品質経営システム構築の実践集』(日経品質管理文献賞受賞)
『超簡単!ISO 9001の構築』,
『ISO 9001プラス・アルファでパフォーマンス(業績)を向上する』
『ExcelでQC七つ道具・新QC七つ道具作図システム』
『Excelで統計解析システム検定・推定編/実験計画法編』ほか
何れも細谷克也共著,日科技連出版社

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