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ビッグデータ解析の世界へ-QC検定1級レベルからのステップアップ-<2017年05月23日>

 社外の方とお会いする際、私が所属しているZΣ推進部について、「ZΣとは何ですか?」とよく聞かれます。ZΣのZは弊社の社名からとり「ゼオン流」、Σは「足しあわす、総力を結集、全員参加」という意味の造語で、弊社では「ZΣ活動」と称して企業体質強化のための改善活動を全社展開しています。私はデータ解析等を通し、製造現場での改善活動を支援する業務を担当しており、上司の勧めで2012年に日科技連の品質管理セミナー・ベーシックコースを受講しました。当コースはQC検定1級対応として設定されていることから、一見すると難しい内容と思われがちですが、「ベーシック」の名の通り基礎的な部分から丁寧に解説されており、品質管理やSQC手法を学び始めた技術者に適したセミナーでした。私自身もSQCについて初心者だったため講義についていくのが大変でしたが、日本を代表するベテランの講師陣に30日間に渡りご指導を賜り、SQCの基礎を習得することができました。さらに実務で経験を積み、翌年にはQC検定1級に合格することができました。職場に戻った後も、改善活動にこれまで以上にSQC手法を活用することにより、仕事の幅が広がったと実感することがありました。

 しかし一方で、一部の手法については多少の違和感を覚えながら勉強しておりました。弊社のような化学プラントを有する装置産業(プロセス産業)では、作業者が直接手を動かして機器を操作するのではなく、ほとんどの設備が制御システムにより遠隔操作されています。従って、設備のいたるところにセンサーが配置されており、そこから送られてくるデータは変数の数もn数も非常に膨大な量になります。このようなデータで重回帰分析を行った場合、P値を用いた変数選択では検出力が高すぎてうまくいかない事があります。そもそも仮説検定の考え方は、データをたくさん取得することが難しかった時代に「少ないデータから母集団を推定しよう」というアプローチがベースとなっており、大量なデータを解析するのには適さない場合がありますが、大量なデータの取り扱いについては、ベーシックコースで学習する範囲を超えるものでした。

 その後、社外活動の一環として、プロセス制御に関する学会で「ソフトセンサー」の構築を目指すワークショップに参加する機会を得ました。ソフトセンサーとは、直接測ることが難しい変量を、測定可能な変量から推定するモデルのことです。例えば蒸留塔において、製品の組成を短い時間間隔で測定することは困難ですが、温度や流量、圧力などの測定可能な操業データから製品組成を推定するモデルを作成し制御に活用することにより、安定した運転を実現することが可能となります。装置産業ではソフトセンサーの実装が徐々に進んできており、私もワークショップで得た知見を社内に展開しようと考えておりますが、ソフトセンサー構築にあたっては、化学プラントに関する物理化学的な知識が必要なことは言うまでもなく、さらには大量なデータの解析に関する統計的な知識も求められます。しかし先述の通り、大量なデータの取り扱いに関してはベーシックコースで習得する範囲を超えるものであったため、日科技連主催のセミナーである「モノづくりにおける問題解決のためのデータサイエンス入門コース・設計コース」を受講しました。このセミナーでは、なぜ大量のデータを扱う場合に仮説検定をベースとした統計手法では難しいのかについても解説されており、私にとって非常に有益なものでした。また、n数や変数の数が非常に多いデータに対して最近は様々な手法が開発されてきている事を知り、もっと勉強して自分の業務で活用したいと感じました。

 米Google社のチーフエコノミストであるHal Varian氏が2008年にNew York Timesの記事の中で「I keep saying that the sexy job in the next 10 years will be statisticians. And I’m not kidding.」とのコメントを発表してから約9年が経過しました。製造業においても、今後ますますビッグデータ解析の果たす役割が大きくなることが予想されます。ビッグデータは3つのV(Volume、Variety、Velocity)とも言われ、私が扱うような化学プラントの操業データは、正確にはビッグデータと呼べるものではないかもしれませんが、少なくとも「大量のデータ」であることには間違いありません。測定機器の発達はめまぐるしく、データが大量にあるのが当たり前の時代となってきております。今後の技術者は大量のデータを解析する知識が必須といわれる日が来るのも間近ではないでしょうか。ベーシックコースを卒業された方々や、あるいはこれからベーシックコースを受講される方々におかれましても、卒業後にはぜひビッグデータ解析の世界へステップアップされることをお勧めいたします。

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Profile

     沢井 正剛 氏
日本ゼオン株式会社 
生産革新センター ZΣ推進部
121BC(2012年5~10月)卒業

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