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SQC(統計とビッグデータ)
SQC

製造業の統計的品質管理教育<2019年07月31日>


温故知新


 遡ること1950年、デミング先生によるQC(品質管理)講習会を契機にデミング賞が創設され、我が国のQC活動が始まりました。彼が伝えたかったことの1つは、「ばらつきに学び、ばらつきを制御する」ことでしょう。そのための道具がSQC(統計的品質管理)で、今でも改善のサイクルを科学的に行うための必需品です。SQCが育んできたのは観の目です。観の目とは「事実に背を向けないで真実を探求する事」です。
①まず現場・現物の観察を深く行う。②そこから仮説を発見する。③仮説を立証するために、偏りなく効率的なデータの収集計画を立てる。④得られたスモールデータを標本として分析し、母集団を推測する。⑤仮説が正しいことを行動し検証する。⑥それを組織知にして成長に繋げたのです。今ほどにデータが容易く手に入らなかった時代、私たちは母集団が現実とは違うと承知して、手段としての統計学に基づくモデリングを積極的に支持しました。自分にとって都合の良いことばかりを想定して行動するよりも、都合の悪いことも想定して行動すると、それが誤りだったとしても、多少の不利益を受ける程度で滅茶苦茶な事にはならないという事を学習したのです。
 


新たなデータ分析の知活用
 時は流れ、現代は身近にある様々なモノに含まれるセンサを介して、何時でも何処でも誰もが行動の足跡を吸い取られています。企業は得られた足跡をビッグデータとして素早く分析して、ビジネスに活用します。ビッグデータを使って良質でスケールの大きなアリーナ(仮想劇場)を先んじて構成した企業が一人勝する時代です。如何に顧客の価値行動の足跡をリアルタイムに収集・分析し、顧客価値の大きい事業シナリオを持つアリーナを提供できるかが重要です。魅力的なアリーナを作るエネルギーとなるのがビッグデータの収集・データ管理、および予測です。時系列にタイムロスなく蓄積されるデータは数値だけでなく、会話・画像・動画など多岐に渡ります。
このようなビッグデータを収集・管理し予測を行うために機械学習は発展しました。機械学習はSQCの主戦場とは異なる分野からブレークしましたが、SQCの場でも利用されています。機械学習の活用品質を高めるには「自分で分析するから機械に教える」というデータ・エンジニアリングの姿勢が必要です。実務家はサイエンスに溺れることなく、エンジニアリングとして知活用に重きを置くことが大切です。
 


SQC教育現場が直面している問題
 SQC教育は「統計学を使い問題解決ができる人材を育成したい」という願いが込められています。知識の習得よりも知恵の活用を育むSQCを基盤教育として必須化する企業は多くありました。スピードと集合知が要求される現代において、SQC教育が抱える問題を2つほど紹介します。
1つは組織の細分化・専門化により、事業システムの全体像を把握できる人材が減っていることです。もう1つは教育の時短です。SQCの手順や意味を丁寧に教える旧来型の教育は企業が教育にかける時間枠に収まりませんし、安易なアウトソーシングも行われています。SQC教育の効率化にはソフトウェアを使うなどの工夫が必要です。ただ、多くのソフトウェアは分析用に開発されたもので、教育要素が盛り込まれたものではありません。ソフトウェアの操作手順を示すだけでは、中身はブラックボックスのままですから応用が利かないかもしれません。逆に、行列計算や微分積分など数式の展開を中心とした数理教育だけでは手法の利活用のイメージを抱ける人は少ないでしょう。

 

ケースメソッド導入の薦め
 自分たちの業務課題に道具としてSQCや機械学習を活用することで、改善活動自体が組織の血となり肉となります。その際、活動するメンバーへのコーチングが大切になります。コーチには道具を扱うキモや作法を伝授する役目と問題解決活動で迷走しないようにシェルパ役の2つの技量が求められます。社内教育のメリットは先輩がシェルパ役として、自身の事例を紹介することで「我々も先輩に続こう、自分もやってみよう」とメンバーの背中を押すことができます。
加えて、ケースメソッド(実習教材・ケーススタディ・シミュレーションの活用等)を導入することも有効です。ケースメソッドは模擬実技ですからケーススタディが重要です。ケーススタディを使い、自分たちで考え意思決定をします。疑似体験でも実際に活動するためのコツを学び、それが自信につながります。
今までのSQC教育は講師から受講者への一方通行で、個人が個別に統計手法を修得することに目が向きました。確かに、個々の統計手法を体系的に正しく学習することは重要です。加えて、SQCで得られた結果から主体的に行動することがより大切です。教育にかける時間の中で、ツールの扱い方が半分、ケーススタディ半分といったSQCカリキュラムを作ることが求められます。人は感情の生き物ですから、意思決定をする際に情緒的な判断(勘・偏った経験・面子・勢い・想像等)をしがちです。知覚探索で科学的に情報を判断できなければ、感覚に偏った情報が届き、自己価値により誤った修正が加えられて方向違いの予測スキーマとなってしまいます。すべての意思決定を統計的方法で賄う必要はないでしょうが、SQCを学ぶことで事実に基づいた論理思考を身に着けることができれば、本気の働き方改革になるのではないかと感じています。(本稿は『製造業の統計教育』、“統計” 2018年12月号、(財)日本統計協会を加筆修正したものです

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Profile

    廣野 元久 氏
   (ひろの もとひさ)
     株式会社リコー

メディカルイメージング事業センター品質保証・薬事推進室長

1984年:リコー入社、以来、SQC・信頼性技術の啓蒙普及、リコーグループのQMS及びCS経営に従事。
品質管理本部信頼性技術室副室長、品質本部QM推進室長、総合経営企画室、SF事業センター所長を経て、現職。

東京理科大学 工学部経営工学科 非常勤講師(1997-1998)
慶応義塾大学 総合政策学部 非常勤講師(2000-2004)
アンスコム的な数値例で学ぶ統計的方法23講(共著:日科技連出版社)
グラフィカルモデリングの実際(共著:日科技連出版社)
目からウロコの統計学(日科技連出版社),等

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