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TQM(品質・改善・とマネジメント)
TQM

企業の立場でTQM推進を思う―推進事務局の体験から―(最終号)<2016年03月24日>

■受賞後の推進計画を明示する
①「TQM実情説明書」提出後の活動にさらに磨きをかけて,効果の上乗せができるようにします。
 実情説明書に記載した効果指標の実績は,当該年度の3月末時点のものです。受審月は大体8月頃になりますので,その間の6か月の活動も重要と考えました。実情説明書を出せば一安心という訳ではありませんでした。活動のさらなる充実と効果グラフの更新が必要になります。
 この考えは,1番目の会社の受審時に審査の先生から,「実情説明書にある“今後の進め方”に示した活動項目について,この6か月でどれだけ進んだのか説明してほしい」 と質問され回答に苦労した体験がもとになっています。また,目標値がない効果グラフを質問され,「管理の基本が理解されていない。単なる成果と効果は違う」と説明いただきました。PDCAを回す活動の観点に改めて気付かされ“目からうろこ”の思いでした。
 前号の図38 重点活動強化事項抽出表で決定した活動にさらに磨きをかけるために「機能別相互診断」の仕掛けを考えました。前田建設をはじめグループ会社のTQM活動の精鋭も加わってもらって診断チームを編成し,実情説明書に記載した各機能別(方針管理,品質保証・・・)の活動を診断してもらいました。
 このときの説明資料は,受審時の「重点説明資料」を先取りし,改善の都度更新していきました。社内ではなく第三者の目でも評価してもらうことは有効で,併せて受審におけるプレゼンテーションのリハーサルにもなり,一石二鳥です。図39に「機能別相互診断質問書」の一部を示します。

② TQM推進の効果を全員で実感できるようにします。
 活動の効果が誰の眼にも見えるようにするには,やはり定量的に測定できる指標が必要です。推進計画の時点で期待する効果としてこの指標で目標値を設定していますが,活動の過程でさらに新たな指標が出現します。
 効果指標には,活動プロセスを評価するもの(機能ごとの重点活動)とそれを総合的に評価する総合効果があります。図40に「重点活動・効果 指標の系統表」を示します。
 実情説明書に記載した効果指標を整理したもので,重点活動の計画時からさらに見直し・更新がされていて,活動の進捗ごとに見える化が図られています。
 また,定量的な「有形の効果」だけではなく,定性的な「無形の効果」が得られることもTQM推進の効果の大きな特徴です。図41に「TQM推進の総合効果」を「重点説明資料」から抜粋します。
 有形の効果と無形の効果を記載しています。特に,教育の仕組みが必然的に確立され人財が育つ,働きやすい楽しい職場環境が創成される,コミュニケーションが向上するなど様々な副次的効果が得られます

③ TQM推進の軌跡を記録し,全員の思い出と今後の糧になるようにします。
 いよいよデミング賞受審の当日を迎えました。受審運営組織の編成や「受審インストラクション」の確認など準備は万端でした。
 会場に入ると推進スタッフは落ち着いたもので,受審各部門のみんなも適度な緊張感のなか,「やるだけはやった,どんな質問でも来い」の思いが顔にでていました。
 受審前の最後の指導会における細谷先生の,「後は自信を持って熱意を込めて説明しなさい」の一言が効いていました。
 デミング賞受審当日の雰囲気を「デミング賞受審記録」の中から図42に示します。
 審査終了後は全員が晴々とした顔で,「もらったゾ」の雰囲気でした。推進事務局としては自信過剰に心配の向きもありましたが,打上げ会の歓喜の渦に巻き込まれました。
 やはり何よりも主役は実施部門であり,黒子である推進事務局はこの場面でも盛り立て役でした。
 TQM推進においてデミング賞などの合否の結果は一つの目標ですが,それに至る活動プロセスが何よりも重要と思います。経営トップの決断によりTQMを導入し,「デミング賞」や「TQM奨励賞」に挑戦する過程(プロセス)で様々な効果が得られます。
 このプロセスは,会社のみならず社員一人ひとりにとっても貴重な体験・糧であり,他人にも語れる自慢の思い出になると思います。図43に「デミング賞受審記録」の目次を示します。何よりも社長・役員以外をはじめ,社員一人ひとりの感想文が嬉しく思いました。同記録の中から私が記した「デミング賞受審の軌跡」の抜粋を図44に示します。

④ 受賞後の推進計画を明示し,TQM活動がさらにステップアップできるようにします。
 遂にデミング賞の受賞が決定しました。
 推進事務局の仕事は,当然ながらこれで終わりではなく,次の活動に向けたTQM推進のビジョンが必要です。社長・役員との打合せで色々と意見を交わしました。
デミング賞合格とは言いながら「審査意見書」で大変貴重な意見を頂き,今までの活動の弱点が明確になりました。
 「審査意見書」を精読して各機能別に図45の「TQM活動展開表」を作成しました。「審査意見書」の審査意見を系統的に整理し,機能別の対応と具体的実施事項及び管理項目の関係を示しました。これを基に「デ賞受賞後課題整理表」にまとめました。さらに受賞後を含めた5カ年の「TQM推進中期計画」を図46に示します。
 デミング賞の受賞は“TQM推進の一里塚”と言われています。受賞1番目の会社では,故大場先生から「これから本物のTQCをやろう」と言われ,後にN賞(現デミング大賞)の受賞を果たしました。

⑤ TQM推進の効果がねらいどおり得られた要因は数々ありますが,推進事務局の立場でいま思い起こすと次の三点になります。
ⅰ. 経営トップの英断と強固なリーダシップ
 「グループワイドのTQM」の方針のもと,デミング賞の受賞4度の機会を得ましたが,何れの場面でも経営トップの揺るぎない方針と強固なリーダーシップがありました。
ⅱ. TQM推進のノウハウの活用
 「グループワイドのTQM」により,デミング賞の受審の都度,TQM推進のノウハウがグループ内に蓄積され共有されました。受賞までの期間ですが,1番目の会社で約9年を要したものが4番目の会社ではわずか1年(元々根付いた活動があったから)の短期間でした。
 TQM推進ツールの工夫が何よりも効果的で,グループ内で培ったノウハウの結集が4番目の会社で発揮されました。その集大成が細谷先生の編著による『品質経営システム構築の実践集』で,日経品質管理文献賞の受賞に到りました。これまで紹介した事例の多くが収録されています。
ⅲ. そして何よりも指導講師の力
 自己流のTQM推進ではうまく行きません。1番目の会社で始めた最初のQCは指導講師がいないまま5年もの迷走を続け,このことで受賞まで長い期間を要しました。指導講師の力は不可欠と思います。
 細谷克也先生をはじめ押村征二郎先生,大滝厚先生,そして故大場興一先生,故清水祥一先生の強力な講師陣のお蔭です。
 ともすれば方向を見失い,足を踏み外しそうなところを常に支え,導いていただきました。TQMをとおして社内の多くの人財が育ちました。まさに「TQMは教育に始まり教育に終わる」の場を実践していただきました。
 改めてお礼を申し上げます。感謝の念で一杯です。(完)
 



図39 機能別相互診断質問書



図40 重点活動・効果 指標の系統表



図41 TQM推進の総合効果



図42 デミング賞受審記録



図43 デミング賞受審記録<目次>



図44 デミング賞受審の軌跡



図45 TQM活動展開表



図46 TQM推進中期計画
 
 
 
 

今号が最終号になりました。
最初の投稿以来8回を数えましたが,TQM推進事務局の楽屋話に徹したつもりです。とりとめのないつまらない話に長い間お付き合いありがとうございます。

 

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Profile

      西野武彦 氏

1946年生まれ
1964年前田建設工業株式会社入社/以来,建築施工,TQM推進に従事
1989年同社デミング賞受賞
以降,グループ共全四社のデミング賞受賞,そのTQM推進事務局に従事, JSQC第1回品質管理推進功労賞受賞
現在,日本品質奨励賞審査員,ISO審査員(QMSエキスパート審査員),
品質管理学会員,TQM・ISO研修コース講師,一級建築士
著書:『品質経営システム構築の実践集』(日経品質管理文献賞受賞)
『超簡単!ISO 9001の構築』,
『ISO 9001プラス・アルファでパフォーマンス(業績)を向上する』
『ExcelでQC七つ道具・新QC七つ道具作図システム』
『Excelで統計解析システム検定・推定編/実験計画法編』ほか
何れも細谷克也共著,日科技連出版社

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