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ソフトウェア品質管理研究会
特別講義 2018年度
特別講義レポート: 2018年 2017年 2016年 過去のテーマ: 一覧
 
例会
回数
例会開催日 活動内容
 2018年
1 5月11日(金)

特別講義

テーマ 情報通信システムの品質向上ニーズとSQuaRE シリーズ国際標準による対応
講演者 東 基衞 氏
(早稲田大学名誉教授)
2 6月15日(金)

特別講義

テーマ 仕事とキャリアに生かす「コンセプチュアル思考」
~抽象化・概念化の力がどう自己と組織を変えていくか~
講演者 村山 昇 氏
(キャリア・ポートレート コンサルティング 代表)
3 7月12日(木)~13日(金) 合宿
4 9月中旬 ソフトウェア品質シンポジウム2018 本会議(会場:東京)
5 10月12日(金)

特別講義

テーマ 品質技術の実践事例
講演者 足立 久美 氏
(株式会社デンソー/本研究会 実践コース 副主査)
6 11月16日(金)

特別講義

テーマ 製品・サービスのユーザビリティおよび社会的インパクト向上に関する取り組み
~今後必要となる社会的受容性およびインパクト評価手法
講演者 伊藤 泰久 氏
(オムロン エキスパートリンク株式会社)
7 12月14日(金)

特別講義

テーマ ユーザーストーリーマッピングを用いたアジャイルな要件定義ワークショップ
講演者 川口 恭伸 氏
(楽天株式会社)
 2019年
8 1月11日(金)

特別講義

テーマ IoT・AI時代のテスティング・検証技術の最前線
講演者 石川 冬樹 氏
(国立情報学研究所/本研究会 研究コース5 副主査)
9 2月22日(金) 分科会成果発表会
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第1回特別講義 レポート
日時 2018年5月11日(金) 15:15 ~ 17:15
会場 (一財)日本科学技術連盟・東高円寺ビル 地下1階講堂
テーマ 情報通信システムの品質向上ニーズとSQuaRE シリーズ国際標準による対応
講師名・所属 東 基衞 氏(早稲田大学名誉教授)
司会 喜多 義弘 氏(東京工科大学)
アジェンダ
  1. S&S品質向上のニーズ:その背景と影響
  2. S&S品質向上の着眼点と国際標準
  3. ISO/IEC JTC1/SC7/WG6とSQuaREシリーズ
  4. S&S品質の概念とSQuaREシリーズの概要
  5. SQuaREシリーズの品質モデルとその利用
  6. SQuaREシリーズのS&S品質測定技術
  7. SQuaREシリーズのS&S品質要求定義技術
  8. SQuaREシリーズによるS&S品質プロセス
  9. SQuaREシリーズの品質評価技術
  10. SQuaREシリーズの現状、課題と改定計画
アブストラクト

ICT(情報通信技術)の急速な進歩により、 情報通信システム及びそのソフトウェア製品(S&S)が多様化し、普及しています。S&S製品の品質の欠陥が多様な利害関係者に重大な影響を与える恐れのあるクリティカルなS&S製品の品質向上は現代社会の最重要課題のひとつです。
ISO/IEC JTC1/SC7/WG6は、ISO/IEC 9126 (JIS X0129) 品質モデルの制定から始め、現在はISO/IEC 25000 SQuaREシリーズ国際標準化を通じてS&S製品の品質向上を目指して活動を行っています。
この講演では、S&S製品の品質不良の影響と品質向上の方策を述べた後、SQuaREシリーズの概要及び利用方法を解説し、SQuaREシリーズの今後の課題及び解決の活動を紹介します。

講義の要約

東 基衞 氏
早稲田大学第一理工学部卒業後、日本電気(株)に入社。各種システム開発を担当後、同社ソフトウェア生産技術研究所ソフトウェア管理技術開発部長を経て1987年退社。その後、早稲田大学理工学部教授に就任し、現在、早稲田大学名誉教授。1975年よりISOソフトウェア工学関連国際標準化活動に参加し、2000年よりISO/IEC 25000シリーズの統括エディタ、ソフトウェア品質要求および評価シリーズ(SQuaRE)の統括エディタに就任。情報処理学会情報規格調査会SC7/WG6主査、SQuaRE シリーズ各標準JIS化委員長を歴任。
コンピュータソフトウェアの標準化、事務システム標準化マニュアルなど著書多数。その他、通商産業大臣賞、日経品質管理文献賞、IEEE CS Meritorious Service Awardなど受賞多数。また、英国South Bank大学客員教授、及びカナダ・モントリオールETS(工科大学)客員教授も歴任。


1.S&S品質向上のニーズ:その背景と影響
  • S&Sの品質不良は時によって、企業存続のリスクにまで繋がることがある。
    ⇒自動車の急加速問題とされた一連の騒動で、売上・株価・リコール費用・信用等に大きく影響。
  • 情報通信技術(ICT)の急激な進歩により、新概念のアプリケーションやシステムが生まれ、それらに対する品質向上のニーズが次々と出てきている。
    ⇒カーナビの迂回ルートに従うと、皆がそのルートに流れ、今度はそちらが渋滞する問題。
  • 一方で、利用者の責任というのも重要視されてきている。
    ⇒いまやセキュリティソフトを導入するのは常識である。
  • S&S利用の範囲が広がる中、一般市民やその他の利害関係者のリスクを考える必要が出てきている。(直接的な利用者のことばかり考えていてはいけない)
    ⇒東日本大震災における停電による信号機の停止。
    ⇒福知山線脱線事故における列車速度超過。
  • リスク管理のプロセスとしても国際標準があり、PMBOK(R)やSEIなどが代表で国際的にも重要視されている。
  • S&Sの種類によって、それぞれ重要視する品質特性は変わる。
    ⇒Interactive Consumer Software … 使用性、共存性
    ⇒Internet and Open Systems … セキュリティ、相互運用性
    ⇒Mission Critical Systems … 機能正確性、信頼性
2.S&S品質向上の着眼点と国際標準
  • S&S品質の向上には次の6項目の対策が重要かつ有効である。
    ⇒組織として、品質向上技術戦略を確立し、その活用環境を整備し、組織的に対策を立て実行する。
    ⇒国際標準やJIS標準を参照し品質向上に役立てる。
    ⇒プロジェクト毎に、品質モデル及び品質測定法を用いて品質要求を明確に定義する。
    ⇒その定義に基づいて作り込むためのプロセスをデザインして実行する。
    ⇒テスト段階にて品質要求の優先度や重要度を考慮したテストケースを作る。
    ⇒問題発生に備えたリスク管理を考えていく。
  • ソフトウェア(システム)品質とは、明示された状況下で使用されたとき、明示的ニーズ及び暗黙のニーズをソフトウェア製品(システム)が満足させる度合いと定義されており(SQuaRE 25010 品質モデル)、S&S製品に必要な品質要求は、品質モデルと品質測定量を用いて、品質特性及び品質副特性毎に定義するとよい。
  • S&Sの品質は、内部品質、外部品質、利用時の3つの視点から、要求、測定、評価すべきである。
  • システムの品質要求の実現には、ソフトウェアの機能要求に変換する必要のある場合が少なくない。
  • S&S品質を向上させるための着眼点として、要求品質、プロセス品質、プロダクト品質、リソース品質、マネジメント品質が挙げられる。
  • 常に高品質の製品を作る仕組みの構築として、例えば、SEI-CMMI、ISO/IEC 15504 SPA、ISO 9000シリーズなどを参考に活用すると良い。
  • プロセスやプロダクトに関する国際標準があり、国際的にも重要視されている。
    ⇒組織能力・プロセスの評価・改善:SEI-CMMI、IEC/IEC 25504
    ⇒優秀なソフトウェア人材の教育・育成:ISO/IEC 19759(SWEBOK)、ISO/IEC 24773(ソフトウェア及びシステム技術専門家の知識・能力証明技術者の認証に活用)
    ⇒プロセス標準:S&Sライフサイクルプロセス(JIS X0160,X0170)、IPA/SEC 共通フレーム2013、ライフサイクルプロセス-リスク管理(JIS X0162)
    ⇒優れた技術・ツールの選択使用:ISO/IEC 14471 CASEツール(SC7/WG4)、ISO/IEC 19505 UML(SC7/WG19)
  • S&S品質に関する国際標準があり、国際的にも重要視されている。
    ⇒プロジェクト管理の標準およびツール:PMBOK
    ⇒テスト技術:ISO/IEC 29119
    ⇒品質関連:品質マネジメントシステム(JIS Q 9000)
    ⇒S&S品質要求と評価:ISO/IEC 250nn SQuaREシリーズ
3.ISO/IEC JTC1/SC7/WG6とSQuaREシリーズ
  • SQuaREシリーズを作ったSC7/WG6は、1990年アメリカ・ワシントンDC会議で設立決定し、Title:Systems and Software Qualityとして、品質を高めるための標準を作ることを目的として設立した。
  • SQuaREシリーズの狙いとして、ISO/IEC 9126シリーズ及び14598シリーズ標準の統合及び改定があり、1999年、SC7/WG6 金沢会議にて検討され、2000年SC7 Madrid Meetingに提案し、決定した。
  • 標準品質モデル作業が1985年2月:SC7/WG3 ドイツ・ミュンヘン会議で開始され、品質を表す単語をKJ法要領で洗い出し、品質特性と品質副特性を作った。1991年:ISO/IEC 9126にて最初のモデルが出来上がって以降、何度かの統合改変を経て00年5月:マドリッド会議でSQuaREシリーズ化を提案し、承認を得た。
  • ISO/TC97/SC7の歴史及び国際会議として、1974年 パリでのISO/TC97/SC7創設から始まり今日まで継続しており、日本でも過去何度か国際会議が開催され、2020年5月には日本(岡山)にて開催が予定されている。
4.S&S品質の概念とSQuaREシリーズの概要
  • S&S品質の概念として、「明示された 又は 暗黙の必要性」を英語でどう表すかということで、"degree to which"、"ability of"、"capability of"が議論されている。S&Sの製品としての品質は"capability of"を適用し、ユーザビリティ、利用者の視点では"degree to which"で測ろうとしている。
  • SQuaREシリーズの体系・構成とプロジェクトとして5つの部門から成り立っており、品質管理部門(ISO/IEC 2500n)と品質測定部門(同 2502n)と品質モデル部門(同 2501n)を中心にして、これらを品質要求部門(同 2503n)と品質評価部門(同 2504n)にて利用する構成となっている。また拡張部門として、ISO/IEC 25050~25099が用意されており、ISO 25051は品質認証制度(PSQ)の元として利用されている。また、ISO 25060~25066はユーザビリティのISO/TC159/SC4とSC7/WG28のJWGで作成されている。
5.SQuaREシリーズの品質モデルとその利用
  • 品質モデルとは、品質特性を定義し、品質特性相互間の関係を示すモデルである。品質要求事項の仕様化として、定量的なクリア条件を品質特性毎に品質メジャーを使って要求定義する必要がある。
  • 品質ライフサイクルモデルでは、現在使われているシステムに対して何等かの不平不満があり、こうあれば良いなというニーズ、そのニーズを分析して実現する内容が要求、すなわち利用時品質になる。それに対してどう作るのかを定義したものが外部品質、内部品質となる。外部品質はシステムとしてソフトウェアを動かした時のS&Sの行動に関する品質。内部品質はS&Sを動かす仕組みとして、システムアーキテクチャやソフトウェアアーキテクチャやプログラムコードを意味している。
  • 現在の状態を望ましい状態に変えようとする際、実現するためにどういうシステムにしたら良いかという目標状態を先に決めてから提案システムをデザインしていくデザインアプローチと、現在のシステムを改善していく改善アプローチがある。
  • 利用時の品質は人間のプロセスや機械系システムまでが対象にもなる。システムの利用時に対して、どういう利害関係者がいるか、配送に従事する人もトラックのドライバーも受け取る人たちも考慮する必要がある。
  • 利用時品質モデルとしては、例えばリスク回避性の品質特性に対しては、システムがどういう行動するのか、経済リスク緩和性や健康・安全リスク緩和性などの品質副特性を考慮する必要がある。
  • JIS X 25010 システム・ソフトウェアの製品品質のモデルとして、機能適合性や性能効率性、互換性、使用性、信頼性など品質特性を定義している。なお、ここでの使用性は、製品としての操作の単純さなどのcapabilityについて言っており、それと利用者がどう感じるかは別であるという点が、次の改定での論点となっている。
  • ISO/IEC 25012 SQuaRE データ品質モデルとして、各品質特性に対して、データそのものを問題にする固有(Inherent)と、システムとしてDBMから得られるデータを問題にするシステム依存(System dependent)の2通りある。
6.SQuaREシリーズのS&S品質測定技術
  • 測定できないものは、評価・制御・管理ができない。ただ、人間の感性を扱うのは難しいが、定量化するために様々な研究がなされている。
  • 測定量には、基本測定量(Base Measure)として直接測れるものと、導出測定量(Derived Measure)として測ったものを何らかの関数にあてはめたものの2種類ある。例としてレビューをして見つけた欠陥数と、Kline当りでノーマライズした欠陥数の関係があてはまる。常に双方の測定量を考えて、情報ニーズとして適しているのか、繰り返し評価しても同じ結果が得られるのか、データ収集が容易であるかを考慮して品質測定量を決定していく。
  • 測定方法には、主観的測定として人間の判断を含んだ定量化(フィギュアスケートの評点など)と、客観的測定として数値的な規則に基づいた定量化(アンケート調査による顧客満足度など)がある。また、直接測定として応答時間やモジュール内の欠陥数などと、間接測定として関数関係でKline当りの欠陥数などがある。
  • 測定の尺度には、名義尺度として欠陥の分類、順序尺度として良いモジュールの順序、間隔尺度としてサイクロマティック数、比尺度としてコード行数などがある。
  • 最終的な情報ニーズとして何を知りたいかが重要。情報ニーズに関連する特性として属性をあげ、属性をスケールに写像する測定方法をあてはめると基本測定量が得られ、測定の関数をあてはめると導出測定量が得られ、それを分析しモデルにあてはめると最終的な情報ニーズを満足する情報成果物が出てくる。
  • S&S製品の品質は品質特性に分けられ、それに対応してさらに下位レベルの品質副特性があり、それに対応した品質属性に繋がる品質モデルの構造がある。その品質属性をQuality Measure Element(QME)として関数にあてはめた測定量に対し、総合評価・測定・分析を行っていく。
  • 品質のゴール、何を知りたいかから始める技法としてGQM(Goal Question Metric)がある。
  • 測定対象と測定技法の例として、S&S品質への影響要因には要員の経験や定義されたプロセスが評価対象となる特性例であり、またS&S内部属性には仕様書レベルが対象と考えられ、ソフトウェアはシステムとしての外部属性の対象であると言える。
  • S&Sライフサイクルの各段階で利用可能な信頼性測定量は異なってくる。
7.SQuaREシリーズのS&S品質要求定義技術
  • 要求には機能要求と非機能要求があり、非機能要求は品質要求と管理上の要求(価格,納期など)であり、SQuaREのテーマはこの品質要求にあたる。S&S品質要求定義は、ソフトウェア機能共有に反映すべきシステム品質要求と、設計・開発プロセスに反映する必要のあるS&S品質要求を考慮する必要がある。
  • S&S製品には利用者を始め多様な利害関係者が関与する。例えば、ミッションクリティカルシステム(航空管制や原子力発電システム)では、利害関係者として一般大衆など、そのシステムの存在を知らないが問題が起きると甚大な影響を受ける者がいる。
  • 利用者のニーズとは、製品を利用する際の、製品の効果に対する期待である。利用者とはシステムを直接・間接に利用する人を指し、一次利用者は直接操作、二次利用者は運用管理、間接利用者は出力情報を利用する人と定義している。製品利用の効果は、製品の機能と品質に依存し、また利用者のニーズは製品のアウトカムズをどう利用するかによって変化する。
  • 多様な利害関係者が多様な製品へのニーズを持つ。それらのニーズを収集・分析・選別し、製品としての要求仕様へ転換しなければならない。システムとしての振る舞い、それに対するソフトウェアの振る舞いを利害関係者の要求事項に分けていく。それを製造する人に分かる様な形式で記述するとS&S要求事項・要求仕様書になる。
  • S&Sの要求分析は、一般に問題の規模と複雑さが非常に大きく難しい。また、環境変化により要求も変化し続けるため、変化の予測および対応を考慮する必要がある。利用者と開発者のコミュニケーションは難しく、互いに異なる専門知識を前提として異なる言葉を使用する。また利用者は真のニーズを知らないことがある。
  • 外部品質要求は、システムとしての振る舞いを考え、3グレード程度の重要度によって品質特性に優先順位をつけて仕様化するとよい。
  • 内部品質要求は、設計レビュー、コードレビューの際に、チェックリストなどを用いて評価可能でなければならない。またプロセスデザインにて、レビュープロセスを作って、どれくらい時間をかけ、そのチェックリストをどう作るかを考慮しなければならない。
8.QuaREシリーズによる品質実現プロセス
  • 品質は品質要求に対応したアーキテクチャ設計、コンポーネント設計、開発、などのプロセスで作られる。品質の確認はデザインした品質確認、評価プロセスを実行して行われる。
  • プロセスを詳細化するために、機能モデル毎の要求事項に対する作業項目をデザインする。例えば、使用性要求に対してであれば、適切度認識性、習得性、運用操作性、UI快美性などに分けて、それぞれについて実現プロセスをデザインしていく。
9.SQuaREシリーズの品質評価技術
  • 品質の確認はテスト及び評価プロセスで行われる。従って、品質要求をレビュー及びテストプロセスに反映することをプロセスデザインで定義しておく。
  • 品質要求事項毎に品質を測定・評価・改善するために、品質要求事項に対応した品質測定量の選定が重要である。
  • 品質要求事項の優先度を考慮してテスト・評価するために、スタティックテスト、ダイナミックテスト、フィールドテスト時に、それぞれ何をテストすべきか品質要求に対応したテストケースを作る必要がある。
  • 評価要求を作成(評価要求の確立)し、それに従って何を対象にして評価するのかを設計し、評価対象の測定量選択、測定量の判定基準を定義(評価の明示)し、さらに評価を実施して結果を審査する必要がある。
  • 品質評価基準の設定として、品質要求をもとに重要度の高いものから重点的に評価プロセスをデザインし実施していく。また品質副特性に対応する品質測定法(外部、内部)を設定する必要がある。
  • JIS X25040-Annexでは、評価レベルを定義することを提案している。但し、評価レベルの決定にあたっては、品質問題がシステム全体で見る場合と、システム内の特定機能に特化して見る場合で異なり、必ずしもシステム全体で評価レベルを変えるのではなく、システムのアーキテクチャをベースにしたシステムコンポーネント毎に品質要求レベルを考えて決定する必要がある。
  • 測定結果をレイティング(評定)して、予め定めたレイティングレベルに照らし合わせて評価結果(合格/不合格)を決定する。
  • 総合評価として、測定及び評価結果を品質特性及び副特性毎に要約する。結果をグラフなどで可視化する。
10.SQuaREシリーズの現状、課題と改定計画
  • 国際標準刊行済み/JIS化:
     TS 25011:SQuaRE :新規、JIS化予定なし。サービス品質盛り込む。
     ISO/IEC 25022:SQuaRE:JIS化作業中。
     ISO/IEC 25023:SQuaRE:JIS化完了、発行済み。
     ISO/IEC 25024:SQuaRE:JIS化完了、発行済み。
    【開発・改定作業中】
     ISO/IEC 25020-2007:SQuaRE
     ISO/IEC 25030-2007:SQuaRE
    【新規提案・改定準備中】
     ISO/IEC 25010-2011:SQuaRE
    【参考】
     ISO/IEC 25045-2010:JIS化予定なし。テクニカル文書として参考文献。
  • ISO/IEC 25010:SQuaRE 品質モデルを3つのパート(品質モデル外観、プロダクト品質、利用時品質)に分冊化予定。
  • 対象製品の利用者、利害関係者を拡張整理している。利用者(一次,二次)、間接利用者、一般市民。
  • 主な課題として、SQuaREシリーズの対象、ステークホルダの分類、品質も枠組み、表現の統一などが挙げられている。
  • 品質モデルの対象と品質測定量として、Hardware&Communication FacilitiesとSoftware ProductとDataを含めてICT Productに含める方向で合意してきている。それにUserとRelevant Environmentを包含してInformation Systemとして表して、その上位にICT-System(System of Systems)として多くのInformation Systemを包含すると共に、MachineやBuildingなども含めてその影響を考えようとしている。
質疑応答
  • ISO/IEC 9126を作る過程で品質を表す単語をKJ法要領で洗い出しをされた際、欧米人はボトムアップで作る・機能的に作るよりは、トップダウンで作る方が好きなのかと考えているが、ポストイットなどで作り上げるKJ法 made in Japanのモデルに反発はなかったのか?
    →誰も反対しなかったし、紙やセロテープを使って一生懸命に皆やっていた。彼らにも代々培ったモデルはあったが適用できないので、自分たちでもっといいものを作ろうと前向きで、誇りをもってやってくれた。

  • ISO/IEC 25010の改定作業中ということは、25022と25023の改定の可能性があると認識を持っておいた方がよいのか、それとも改定される見込みがなくMeasurementに関してはある程度の参考レベルになるのか、どちらの認識をお持ちでしょうか?
    →現在の傾向は、大体3つに分ける方向で了解されている。25022などは多少影響を受けるとは思うが、それほど個々の品質特性や副特性をバラバラ変えようという話ではない。利用者の利便を考えて3分冊すると共に、一部問題になっているところを書き直すという程度なので、Measurementに対しては大きな影響はないとの認識。
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第2回特別講義 レポート
日時 2018年6月15日(金) 10:00 ~ 12:00
会場 (一財)日本科学技術連盟・東高円寺ビル 2階講堂
テーマ 仕事とキャリアに生かす「コンセプチュアル思考」
~抽象化・概念化の力がどう自己と組織を変えていくか~
講師名・所属 村山 昇 氏(キャリア・ポートレート コンサルティング 代表)
司会 中谷 一樹 氏(TIS株式会社)
アジェンダ
  1. 「コンセプチュアル思考」概説
    ・知の思考・情の思考・意の思考
    ・カッツが説いたコンセプチュアルスキルの重要性
    ・3つの思考フロー:抽象化→概念化→具体化
    ・5つのスキル:定義化、モデル化、類推、精錬、意味化
    ・[ミニ演習]成長とは何かを定義する
    ・観はどのように醸成されるか
    ・「在り方」を問い、客観を超えたところで主観意志を起こすための思考
  2. よりよい仕事・キャリアのための「コンセプチュアル思考」
    ・仕事・キャリア・担当事業において、なぜ「観」が大事か?
    ・目標は具体次元、目的は抽象次元のもの
    ・目的を成就するための手段・プロセスとして目標がある
    ・目的と手段~ときに手段が目的にすり替わるのはなぜか
    ・お金は働く目的か?
    ・私の提供価値宣言~何の価値を提供する存在かによって自らを定義する
  3. クロージング
    ・絶え間ない変化の中で、何を変え、何を変えないか
アブストラクト

論理によってものごとを分け、真を追っていく知のロジカル思考。人の気持ちに寄り添って、美を求めていく情のデザイン思考。そして、洞察的に全体を観ながら、善を志向していく意のコンセプチュアル思考。本講義では、3番目の思考を取り上げます。
講師が提唱するコンセプチュアル思考の基本は、ものごとの本質を引き抜き(抽象化)、それを言葉や絵で表わしてつかみ(概念化)、行動に変えていくこと(具体化)です。その思考は、商品開発や事業づくりに生かせることはもちろん、個々の職業人における就労観醸成、モチベーション向上、キャリアビジョン創出にも有効です。
本講義では、講義に加え、自身の仕事観や働く上での価値軸を考えるミニ演習も行います。

講義の要約

村山 昇 氏
1986年、慶應義塾大学・経済学部卒業後、プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、2003年に独立。組織・人事コンサルタント。概念工作家。
企業の従業員・公務員を対象に、「プロフェッショナルシップ」(一個のプロとしての基盤意識)醸成研修はじめ、「コンセプチュアル思考」研修、管理職研修、キャリア教育のプログラムを開発・実施している。レゴブロックを用いたキャリア形成の本質を理解するシミュレーションゲームや、概念工作家ならではのユニークな内省ワークなど、哲学の要素を取り入れた教育プログラムづくりで幅広く支持を得ている。


1.「コンセプチュアル思考」概説
  • マネジメントの考え方として、これまでの理論や客観に基づく“MBO(Management By Objectives):目標管理のマネジメント”だけでは個人や組織が動かなくなってきており、主観や直感に基づく“MBB(Management By Belief):思いのマネジメント”の重要性が増している。
    ⇒「考える現場を取り戻すためには、この主観をきちんと経営の中に位置づけることが必要だ。」
     (一條和生、徳岡晃一郎、野中郁次郎:「MBB:“思い”のマネジメント」東洋経済新報社より)
    ⇒「論理によらない直感的な選択によって出された結論というのは、だれにも真似ができない。」
     (福井謙一《1981年ノーベル化学賞受賞》:「哲学の創造」PHP研究所より)
    ⇒「客観的な知識は、ある種の目的を達成するための、強力な道具を提供してはくれますが、究極的な目標そのもの、およびそれに到達しようとする憧れは、他の源泉から生まれねばなりません。」
    (アルベルト・アインシュタイン:「晩年に想う」講談社文庫より)
  • コンセプチュアル思考とは、そういった主観、直感に関わる部分を深く考え、掴む思考方法である。
  • 哲学者カントが提唱した「知情意」の3つの心の働きで言うと、「意」に位置付けられる。
    ⇒知:ロジカル思考(鋭く分析する。賢く判断する。早く処理する。)
    ⇒情:デザイン思考(気持ちをくんで考える。五感豊かに考える。「美しい/快い」を表現する。)
    ⇒意:コンセプチュアル思考(深く洞察する。綜合してとらえる。意味を掘り起こす。)
  • 「知」や「情」にあたる思考は、欧米で発展し、体系化されてきたが、「意」にあたるコンセプチュアル思考は、欧米でもまだ体系化できていないものになる。
  • コンセプチュアル思考(スキル)の重要性は、ロバート・カッツ(*1)やダニエル・ピンク(*2)により唱えられてきたが、それが具体的に何かは述べられてきていない。
    (*1)Skills of an Effective Administrator(1955年)
    (*2)ハイ・コンセプト(2005年)
  • 私が考えるコンセプチュアル思考とは、概念を起こす思考であり、観/ビジョンをつくる思考であり、意味/志を掘り起こす思考である。
    ⇒例えば、自分の生きる意義だったり、働く意義だったりを考え、本質を内面で掴むことがそうである。これは、ロジカル思考やデザイン思考では答えが出ない。
  • コンセプチュアル思考の思考プロセスを「πの字思考」と呼んでいる。
    抽象化(↑)概念化(→)具体化(↓)の3つのプロセスによってπの字の形を描くからである。
  • コンセプチュアル思考には4つのスタンスが必要だと考えている。
    「根源を見つめる」、「全体を観る」、「抽象と具体を往復する」、「客観を超えて主観を持つ」の4つである。
    ⇒客観を超えるというのは、客観は大前提だがそれだけでは不十分であり、そこを超えたところで研ぎ澄ませる主観を持つという意味である。
  • コンセプチュアル思考の基本スキルには、定義化、モデル化、類推、精錬、意味化がある。
    ⇒今日の講義では、定義化、意味化にスポットをあてる。
  • 定義には、客観的な定義と、主観的な定義がある。
    ⇒例えば、「事業とは○○である」という定義には客観的なものから主観的なものまでさまざま存在する。
    最も客観的な定義は、事業とは「一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動」であるという、広辞苑<第六版> の定義であり、主観的な定義は、事業とは「人づくり」である(松下幸之助)など、人によって異なるものである。
  • 客観的な定義(≒社会的通念)も、必ずしも固定的なものではない。
    ⇒「情けは人のためならず」という言葉は、「自分のためになる」から「その人のためにならない」へ変化した。
    ⇒客観的な定義を意図的にずらして(誘導して)、独自の概念を生み出すことは、商品やサービスの企画開発において有用なことである。
    (極北地の人に冷蔵庫を売る際、「冷蔵保管するもの」から「保温保管するもの」に定義を変えて成功した)

~ミニ演習:「成長」を主観的に定義する(πの字思考の実践)~

【抽象化(↑)】
①「自身のこれまでの成長体験、成長エピソード」「他者を通して見てきた人が成長・変化する姿」を思い浮かべる。
②「成長とは何か」「成長についての解釈」を自分なりの言葉で表す。
 ※例)成長とは、「3方向に伸びること-広がる・高まる・深まる」である。
 ※例)成長とは、見えなかったものが見えるようになることである。

【概念化(→)】
③「成長とはどういうものであるか」を図や絵で表す。

【具体化(↓)】
④成長を持続的に起こすための行動習慣としてどのようなものが考えられるか、3箇条にする。
 ※例)何事も運営する側に回る。
 ※例)リスクを負うことを怖がらず行動する。


  • 本演習で定義した「成長」に対する「観」は、具体化した行動習慣を実践し、そこから気づきを得て、πの字思考を繰り返すことによって醸成される。
  • 普段からこういった思考を繰り返して自分なりの「観」を醸成し、人としてぶれない軸を持つことが大事であり、そうでない人は、漫然とした仕事しかできず、漫然としたキャリアにしかならない。

~質疑応答~

  • πの字思考の具体化のプロセスが、なかなかすんなりとできるようには思えないが、実際はどうなのか。
    →おっしゃる通り、すんなりとはいかないだろう。絵図化から行動習慣への過程で何度か紆余曲折を経て、現状の課題や問題点をしっかりと分析してから、行動に落とし込んでいく必要がある。
2.よりよい仕事・キャリアのための「コンセプチュアル思考」
  • キャリアを作る要素は、私は3層で捉えていて、「観・マインド」がその最下層にあたると考えている。
    ⇒1層(知識・スキル・資格・人脈)…have(何を持つか)
    ⇒2層(行動特性・態度・習慣)…do(どう行動に起こして、成果を出すか)
    ⇒3層(観・マインド)…be(どうあるべきか)
  • 自分がどこに向かって進んでいくか、どのように仕事をするか、理想形はどっしりとした3層の「観・マインド」があり、その上で能力が生かされ志・目的の軸が力強く立ち上がり伸びているのが望ましいが、現実の多数はそうでなく、「観」がうやむやで1層、2層の能力だけで何となく仕事をしているケースが多い。
  • 急に「観・マインド」を養おうとして、成功法・ハウツー本を読んだところで、自分なりの「観・マインド」に落とし込めていないため、根本的な解決にはなりにくい。
  • 目標の先に目的がちゃんとあるかが大事。現実は損得の外発的動機に心が動かされ、数値目標に追われ目標疲れにおちいることが多い。目的を持って動いていると、内発的動機が生まれ、深く強い内発の力が湧き、困難に耐える力、乗り越える力、物事をとらえる次元、その意味に共感する人を呼び寄せるなど、そういったところに変化が生まれてくる。
    ⇒レンガ積みに対し、「何をしているの?」>1人目「レンガを積んでいる」
     目標:1日に●個レンガを積む。/目的:特にない。
    ⇒レンガ積みに対し、「何をしているの?」>2人目「金を稼いでいるのさ」
     目標:1日に●個レンガを積む。/目的:食うため。
    ⇒レンガ積みに対し、「何をしているの?」>3人目「大聖堂を造っているんだ!」
     目標:1日に●個レンガを積む。/目的:後世に残る建設事業に加わるため。

  • 目的と手段(目的を実現するための要素・資源・行為・方法)の組み合わせは相対的である。
    より大きな目的が生まれるごとに、今までの目的は手段に替わっていく。
    これが繰り返されて高みを目指すのが理想だが、現実の企業においては、逆に低くなっていくケースが見られる。(数値目標という手段だったものが目的に落ちてノルマ化していく)
    ⇒《レベル1》目的:テストでよい点を取る。/手段:算数を習う、漢字を覚える。
    ⇒《レベル2》目的:希望の大学に入り、好きな研究をする。/手段:テストでよい点を取る。
    ⇒《レベル3》目的:専門を生かした就職をする。/手段:希望の大学に入り好きな研究をする。
    ⇒《レベル4》目的:仕事経験を積んで起業できる力を磨く。/手段:専門を生かした就職をする。
    ⇒《レベル5》目的:社会貢献事業をして人びとに役立つ。/手段:仕事経験を積んで起業できる力を磨く。

~ミニ・ディスカッション:お金は働く目的か?利益獲得は事業の目的か?~

①働く目的が「金を得るため」という考えに対し、賛成か反対か。
②私自身は働く目的をどう考えているか。
③なぜなら?

  • 答えは人によって変わり、正解はない。(「観」が異なる)
  • ドラッカーは、利益は企業の目的ではなく、事業を継続・発展させていくための「条件」であると言っている。
  • 松下幸之助は、利益は「企業使命達成に対する報酬」であると言っている。
  • 自らの存在意義を「提供価値」で考える必要がある。生命を維持する=処し方を問う具体次元(技術・稼ぎ)の先に、存在を開発する=在り方を問う抽象次元(ビジョン・想い)に向けて、最終的に成し遂げたいこと+それをやる意味:提供価値をコンセプチュアル思考で見出してゆく。

~ミニ・ディスカッション:私の提供価値宣言、我が社の提供価値宣言~

①私は仕事を通し、「   」を売っています(を届けるプロでありたい)
②我が社は事業を通し、「   」を売っています(を届けるプロ集団でありたい)

  • 保険会社のライフプランナー:「経済的リスクヘッジによる安心」
  • 自動車メーカーの開発者:「快適な移動空間/道具」
  • レストランのシェフ:「幸福な舌鼓の時間」
3.クロージング
  • 絶え間ない変化の中で何を変え、何を変えないか。
    製品やサービスの外形要素は時代の流れとともに変えていかざるをえないが、その提供価値は不変なものがある。
    ⇒例えば、オーディオ製品では、カセットテープ、光学ディスク、半導体と外形を変えてきたが、音楽を楽しむライフスタイルを提供するという価値は変わっていない。
  • プロジェクト(集合離散型の協働形式)を渡り歩く時代において、自分の働く環境も変わっていく。
質疑応答
  • 「観・マインド」を養うように働きかけたいが、同一現場に長くいるような人の場合、今までの習慣が強く根づいていて、思考が凝り固まってしまっている。そういった人たちに対してはどのようなアプローチをしていけばよいか。
    →社外や組織外のプロジェクトに参画させて新しい人と接触させる、大きな仕事を丸ごと任せるといったことをすると、刺激を受けて「観・マインド」がほぐれるケースがある。
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