第2年度 リスクアセスメント実践研究会
研究対象 I 製品等の開発段階におけるリスクアセスメント
この研究会の前身のR-Map実践研究会の第1研究分科会の成果を踏まえつつも、R-Map手法に捉われずに、製品の開発段階における実践的リスクアセスメントに関する調査・研究を行います。
例えば、自社のリスクアセスメント手法のブラシュアップであるとか、あるいは全く新しいカテゴリー製品のリスクアセスメントの実践であるとか、開発段階におけるリスクアセスメントに関することであれば、全て研究の対象になります。
下図に示すPSPTA法も、この研究会で大きく成長・発展させることができた手法の一つです。
メーカーの設計や品質保証に、開発段階のリスクアセスメントに関する知識が必要であることは言うまでもありませんが、流通事業者や検査機関の方等、製品の開発に直接携わらないという方も、ステークホルダーの一員として開発段階のリスクアセスメントに関する知識を有することは、自社の優位性を築く上で極めて有用なものになるでしょう。
開発段階のリスクアセスメントの推進を担っている方、自社のリスクアセスメント手法をブラシュアップしたい方、PSPTA 法等の実践的リスクアセスメント手法をマスターしたい方、リスクアセスメントにおけるリスク低減値を担保する試験法を作成したい方、調達品のリスクアセスメントを行いたい方、ご自分の身の回りのリスクアセスメントを行ってみたい方等、研究テーマには事欠きません。 また、近年、IoT 機器のセキュリティリスクの見える化が求められてきています。セキュリティリスクの見える化についても、この研究会で取り扱います。
研究対象II 事故情報に基づく既販品のリスクアセスメントと市場措置判断
官庁や公的機関から公表されている製品事故情報や、企業のリコール(自主回収・改修)情報を用いて、製品事故を未然防止するための研究を行います。
事故情報の分析結果から、リスクアセスメントがどうあるべきかを、プロセスを遡って検証していくことになりますので、リスクアセスメントの全体を俯瞰して見ることができ、普段リスクアセスメントの業務に携わっていない方にとっても、会社(または団体)内で、その成果や知見を広げられると考えております。
また、公表されている関連情報や各種統計情報などを利用することが多く、その入手方法、分析、評価手法の習得にも役立つと考えます。
以下に代表的な研究事例をご紹介します。
1)実際に起きた事案から、許容されるリスクレベルか、リスク低減が必要か等、開発段階でのリスクアセスメントの妥当性
を探る。
2)実際に起きた事案から、製品事故を未然に防止するための最適なリスクファインディング方策を探る。
3)実際に起きた事案から、傾向分析を行い、未然防止に繋げるためのフィードバックのやり方を探る。
4)R-Mapで導出した結果と、実際にリコールが実施された(または実施されなかった)現状とのギャップを分析し、あるべ
きリコール判断基準を探る。
5)リスク評価を行う際、R-Mapに、バイアス(偏向)という要素を加味し、客観的に判断するやり方を探る。
バイアスとは、ある製品で怪我をした場合、被害者の属性や原因によって、リスクの程度を変化させるという考え方で、
例えば、被害者が幼児の場合、防衛能力や怪我の程度は成人と異なるので、危害を重く捉える。
研究対象III 流通視点で見る消費者安全対策
流通事業者は、図1のようにメーカー(製造事業者)とユーザー(消費者)を仲介する位置づけにあり、相互の代弁者として安全に関するコミュニケーションにおいて、非常に重要な役割を担っています。
例えば、図2のようにメーカー提供の取扱説明書などの“使用上の情報”や、VOC(お客様の声)などから得られる情報も含めた“残留リスク”をユーザーに伝えるコミュニケーションがあり、またVOCからの情報も含めて、メーカーに対して仕入れ時の安全な商品の選択や安全への追加要求を行うコミュニケーションがあります。
流通事業者の方からは、これらのコミュニケーションにはリスクアセスメントが有効なことは理解できるが、商品の技術的なことが判らない、取り扱う商品が多い、などのお悩みを耳にします。一方で、例えばVOCが集まるという特徴により、ユーザー目線での安全性に関しては、メーカーよりも把握しやすい有利な位置づけにあると考えられます。
メーカーのように技術的に詳しくなくても、これらの情報をリスクとして正しく把握して伝えることができるようになれば、安全に関するコミュニケーションをより有効にすることができます。そのためには、まず、具体的にリスクアセスメントの考え方を知ることが、たいへん役に立ちます。
社内では系統的なリスクアセスメントを行う機会は少ないのではないでしょうか。まずは、研究会に参加いただき、実践的にリスクアセスメントに触れてみませんか。様々な形態の流通事業者がありますが、リスクを正しく把握する考え方を知れば、それぞれの事情に応じた取り組みができると思います。一緒に取り組んでいきませんか。