5.「品質改善シナリオ〔サザンフロー〕」<2016年09月28日>
日本発条株式会社 南 賢治
1987年の入社以来、私は約20年間品質改善に関わってきた。2001年に受講したBCをきっかけに慢性的な不良撲滅に非常に有用である品質改善シナリオ〔サザンフロー〕を完成することができ、社内の品質改善はもちろんのこと、社外(協力会社やBCの班別研究会)でも企業の品質改善のお手伝いをしてきた。その経緯を簡単に紹介したい。
【入社当時:品質改善とはゴキブリ退治!】
入社当時の私は会社の品質改善がまるでゴキブリ退治のように思えていた。その理由は、ゴキブリが“卵”・“幼虫”・“成虫”とそれぞれ習性が変わるように、会社の品質改善も“工程内不良”・“社内不良”・“客先不良”と区分するとそれぞれ対応が異なるという点であった。
【14年経って:99BC(2001年上期)班別研究を体験して】
2001年にBCを受講した。BCでは実験計画法の直交表など品質改善に非常に有用なツールを学んだ一方、品質改善においては、社内外共に改善に取り組む人のセンスや力量によって、真の対策に行き着けない事が多く、非常に歯がゆい思いがあった。ゴキブリ退治の場合、百科事典等でゴキブリの習性(クセ)を知り、退治に活かせるが、品質改善の場合は、品質不具合に共通する習性(クセ)を知る有用な術はなかった。製造業であれば業種を問わず誰にでも有効な改善ができる「退治法」はないものか?…
【BC卒から約1年後:サザンフローの誕生】
2001~2002年にSQC推進プロジェクトチーム(本社組織)に配属されていた私は、2002年夏にBCで習ったことを基に、“解析屋より解決屋”をモットーとしたSQC人財育成のために、“いつ、何を調査し、どのような統計手法で見える化”すべきかをまとめた、効果的・効率的な品質改善シナリオ〔サザンフロー〕を完成した。(2005年にビジネスモデル特許取得)従来の問題解決型QCストーリーでは、改善の調査を行う際に改善メンバーで特性要因図(5M層別)を作り、その中の真の原因と考えられる幾つかの要因に関する仮説を検証しながら要因解析していく。一方、サザンフローは社内の最強メンバーを招集しながら、ある調査手順に従って得たヒントを基に要因整理を行い、真の原因を絞り込んでいく。
【サザンフローの主な特徴】
統計手法を使い品質改善をする際の留意すべき主な前提条件は以下の2点である。
1)取得されたデータは正しいこと。
2)サンプルはロットの代表であること。
そこでサザンフローはこの2点に加え、現状打破の際に生じやすい社内関係者との心理面の摩擦回避を考慮した“後戻りを防止する効率的・効果的要因解析”として、以下の点を工夫した。
1)先ず5Mの1つの測定の信頼性確認。〔過去や今後の調査データは信頼できるか?〕
2)次に類似製品・前後工程の影響度確認。〔改善に補強メンバーは必要か?〕
3)そしてロット内の時系列調査。〔サンプリング方法は適切か?〕
4)結果系調査の後に原因系(4M)調査。〔改善当初から作業者など人は調べない!〕
5)要因整理は上記調査後に実施。〔最強メンバーで信頼できるヒントを基に検討!〕
【2003下期(104BC)~:社会への貢献】
現在は、社内における品質改善に取り組む一方、BC東京クラスでは「班別研究や特別講義」を通じて、(株)日科技研では統計解析業務パッケージソフト「JUSE-Statworks [慢性不良撲滅版]」として、(株)日科技連出版社では書籍「これならできる!慢性不良撲滅法-品質改善シナリオ“サザンフロー”の活用」にてサザンフローの紹介をさせて頂いている。
最後に、BC修了生の皆さんへ
品質改善とは現状打破そのものですから、現状まで造りあげてきた人達の努力に対して尊敬の念を忘れることなく、新たなレベル向上のための改善活動を関係者の方々とプラス思考で進めて頂きたいと思います。これらを考慮したサザンフローが少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
【参考資料】
統計解析業務パッケージソフト『JUSE-Statworks [慢性不良撲滅版]』
書籍『これならできる!慢性不良撲滅法-品質改善シナリオ“サザンフロー”の活用』