
BC
90.シューハートの“近代的”品質管理<2023年04月26日>

M&S クオリティーガーデン(元関西ペイント)
福田 渚沙男 氏(18BC・O)
福田 渚沙男 氏(18BC・O)
往年のJIS Z 8191(品質管理用語)は、品質管理を次のように定義していた。
買手の要求に合った品質の製品又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系。近代的な品質管理は統計的な手段を採用しているので、特に統計的品質管理という。
この「近代的な品質管理」を日本に普及させるために日科技連が継続的に開催してきたのが「品質管理セミナーベーシックコース(BC)」である。初回(1949年)は「スタチスチカル・クオリティ・コントロール・セミナル」という名称だった。私は18BC・Oに参加した。1959年だったと思う。
コース初日には受付で、管理図法、統計理論、抜取検査法などの分厚い書籍をドサッと紙袋入りで渡された。最初の講義は水野滋博士によるオリエンテーションで、私はその頃までに品質管理のことはある程度知っていたつもりでいたが、水野先生の講義は当たり前のことを淡々と説明しているだけなのに不思議な迫力と説得力があり、聴いていて飽きることのない3時間だった。優れた講義とはこういうものかと感じ入った記憶がある。班別研究会の主任講師は石川馨先生、私の担当講師はサントリーの五影勲さんだった。
BCの教科内容はよく工夫されていて、統計的品質管理に必要な基本事項は確実にカバーされている。ただしBCを卒業しただけでは通常は全くの力量不足で、卒業後の研鑽が必須である。私の場合は、ある程度自信が持てるようになるまでに15年かかった。特に有益だったのは当時「統計的方法百問百答」を上梓して意気軒昂としていた関西統計的方法部会に1970年頃から入れて貰い、「何を聞いても明快に即答してくれるスゴイ人達」が何人もいる中での深い議論に身を沈める機会を得たこと、そして1974年に技術士(品質管理)の資格取得に挑戦したとき、ウエスタン・エレクトリック社の『統計的品質管理ハンドブック』や J.M.ジュラン『品質管理ハンドブック』など「品質管理の古典」を、あらためて読み込んだことだった。
統計的品質管理の始祖はW.A.シューハートだと言われている。彼は品質を「バラツキ」として捉え、バラツキを減らすための合理的な行動をとり続けることによって品質は安定化する(経済的な品質管理が可能になる)と主張した。これは画期的大発見である。約百年前のことだが、ISO 9001が言う「プロセス・アプローチ」がこれに相当する。管理の対象がバラツキだから、統計的方法は必然的に必要になる。
品質を「結果のバラツキ」と認識すれば、サービスでも営業でも事務でも行政でも、至る所に改善すべき品質問題が転がっていることに気づく。ちょっとしたルーチンでも時によって所要時間や出来映えにムラがあることには、誰でも思い当たる節があるだろう。
そうした問題を片端から改善していくことで、今や先進各国にすっかり後れをとってしまった日本ビジネス界の生産性向上に実質的な貢献ができるのではないかと、今の私は思っている。DXやRPAの適用を考える前に「近代的品質管理のアプローチで仕事のバラツキを減らしておく」ことが重要で、これは「ほとんど不良ゼロで生産できるメドが付いてからでないと工程の自動化は非効率である」のと同じ理屈である。
BCで習ったことの活用力・応用力が試される場面である。若い皆様の健闘を期待したい。


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