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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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9.「産学をつなぐBC」<2016年09月28日>

大阪大学大学院 情報科学研究科 森田 浩 
 
 
トピックスの執筆を依頼されたのは半年以上も前のことで、それから何を書こうか考えながらも、まとまらないまま締め切りが近付いてきています。これもきちんと日程管理ができていない証です。 
 
当時、私は大学ではオペレーションズリサーチを専攻しており、数理工学とか最適化とかどちらかといえば実務より理論が中心の研究をしておりました。統計学や品質管理は大学の講義で聴くだけのものでしたし、それらが実社会でどのように有効なのか知りたいとも考えていなかったかもしれません。大学院を修了後、教職に就いたころ、BCに参加してみないかと誘われ、77BCの書記として初めて出会うことになりました。 
 
大阪堂島にある中央電気倶楽部の大きな講堂に100人以上の受講者がいて、講師はステージの上からの講義でした。 
大学でも同じような講義はあるのですが、受講生の熱気だけでなく講師からもそれが感じられ、真剣勝負が繰り広げられているような独特の雰囲気を感じたものでした。 
そのときは一通り受講はしましたが、統計手法としての理解は何とかできたものの、実際に適用する場面に直面しているわけではなかったので、実感なく過ごしていたのを思い出します。 
 
その後、班別研究会に参加させていただくようになり、いつのころからか宿題分科会での問題作成にも携わるようになりました。班別研究会は受講生にとっては異業種交流としての価値もあり、BCにおける最も重要な場であることは違いないのですが、学界にいる者にとっては様々な業種の事例に同時に触れることで相違点や共通点を知ることができる貴重な場でもありました。講師にとっては一月に一回というペースですが、受講生には2週間程度しかない時間で次の課題をこなすというきつい研究会ではないかと思います。これまでに接した数多くの事例を提供していただいた皆さんに感謝です。 
 
これにも増して、現場についての意識ができてきたのは宿題分科会における議論ではなかったかと思います。問題作成を通じてSQCの考え方や使い方を基本から鍛えてもらったと実感しています。初期のころのメンバーはよく記憶していないのですが、その後委員長をされていた松本哲夫氏(ユニチカ)、永田靖氏(早稲田大学、当時岡山大学)、竹山象三氏(岡山商科大学)、和田法明氏(バンドー化学)らはそれぞれのパーソナリティもあって、異なった側面からの考え方や見方を教わりました。現在、後を受けての大役を仰せつかっているのですが、出題に当たっては実務に付かず離れずを基本として考えています。とはいってもワンパターンになりがちで、むつかしいものです。 
 
産学連携が求められている昨今、いろいろな企業との共同研究を行っています。企業側は問題がきちんと解決できればよく、適切な手法が適切に使われていれば、どんな手法を使うかにはあまり興味はありません。議論を進めていく中で、適切な解析手法をこちらが提案し、問題解決を図るのが一般的
です。最近のテーマは、多種多様で大量のデータからあることを発見したいというものが多いです。 
目的は省エネ方策であったり、異常発見手法であったり、あるいは機器操作の効率化であったりと様々ではありますが、最適化手法に統計的手法や数理工学手法をうまく取り入れることを考えながら取り組んでいます。とはいっても既存の汎用的な統計的手法などがそのまま使えるような場面は少なく、適切なモデル化というものが極めて重要になってきています。以前は統計や最適化の手法が使える場面を求めて産業界を見つめていましたが、実際の問題が解決できる手法を求めて統計や最適化の手法を見つめることが必要であると実感しています。 
そのためにもいろいろな手法を持っていなければならないし、世の中のニーズも知らなければなりません。よく理論と応用を車の両輪にたとえることがあります。どちらも回転しなければ前進はなく、一方だけではその場でくるくる回っているだけです。どちらを先に回すかというのも臨機応変に対応し、広い視野を持って取り組んでいけたらいいと思っております。 
 
この度、日本品質管理学会関西支部の研究会として大阪大学の黒木学先生を主査とした統計的品質情報技術開発研究会が発足しました。名称を見るだけでは何でも含まれていてどんなことをするのかよくわからないですが、上で述べさせていただいた産と学あるいは理論と応用をつなぐ品質管理の技術を目指しているものであり、私も参画させていただいております。こちらから発信されるであろう成果にもご期待ください。 
 
最後に、BCはその長い歴史や輩出した受講者数など、品質管理の実践と研究の両面において、非常に価値のあるものであろうとおもいます。ベーシックコースという名前だけでは知る人ぞ知るコースですし、決してベーシックな内容ではありません。品質管理のABCを学ぶのではなく、Aの次にあるBとCを学ぶのでしょうか。さてBとCとは?うまい語呂合わせが見つからず、まとまりのない文章になってしまいましたが、これまでのBCから受けた恩恵に感謝するとともに、今後のBCのますますの発展を祈念しております。 

 
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