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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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14.「信頼性手法、実験計画法、タグチメソッド」<2016年09月28日>

富士ゼロックス株式会社 R&D企画管理部 シニアアドバイザー 立林 和夫 
 
 
BCではタグチメソッド(パラメータ設計)の単元を講義しています。 
 
私が初めて統計手法と出会ったのは、大学2年目の教養課程での統計学の授業でした。もう40年以上も前のことです。授業のほとんどは分布論だったと思いますが、さっぱり理解できず、ただ単位取得のために授業に出て試験を受けたという記憶しかありません。4年生になったときに、大阪の日本橋で中古の白黒テレビを3000円で購入し、下宿に持って帰ってアンテナ線を繋ぐと、アポロ11号が月面着陸したシーンが繰り返し放送されていました。ボンヤリとした画面の中で、宇宙服を着た飛行士が月面を跳ねるシーンが印象的でした。 
 
会社に入って1年後、自分から希望し、部品の信頼性試験をやっている部署に転属してもらいました。当時、「アポロ計画の成功は信頼性技術の勝利である」と盛んに報道されていて、信頼性技術というものに強い興味を持ったからです。そして、そこで初めて信頼性試験の統計数理や、その他の信頼性技術に触れました。直列モデルの信頼度やワイブル解析などです。その年に日科技連の信頼性専門コースに参加した先輩のテキストを拝借し、独学で勉強しました。 
 
当時、複写機に使用しているある部品の寿命試験データを分析したのですが、その部品の寿命試験は私が担当した時点でなんと12回目で、それまでの11回の試験では目標寿命よりも前にオシャカになっていました。過去の記録を調べてみると、当社の試験で不合格となったものを部品メーカーの設計者がちょっと設計変更したものをまた試験し、それで目標までもたなかったから、また設計変更して試験するということを繰り返していました。 
 
私は過去の記録を調べて、これでは「その設計がダメだということはわかっても、設計Aと設計Bのどちらの寿命が長いかがわからないのではないか」と思いました。私の疑問を先輩に話すと、実験計画法を勉強してみるといいねとアドバイスを受けました。私の考え方は実験計画法でいう制御因子の考え方だというのです。そこで、やはり社内セミナーで統計手法を受講した別の先輩から森口繁一先生の「統計的方法」というテキストを借り受け、後半の実験計画法の部分を勉強しました。この本で勉強したおかげで、データ構造モデルや分散分析の概念をしっかりと理解できました。 
 
ここで勉強した直交表に設計案を割り付け、各設計条件の寿命試験結果から、どの設計案が寿命の延長に有効であるのかを解析する方法は、タグチメソッドのパラメータ設計の方法そのものです。寿命試験で加えるさまざまな負荷条件はパラメータ設計でいうノイズであり、寿命の延長策(設計)はパラメータ設計でいう制御因子なのです。信頼性試験→実験計画法→パラメータ設計の順番で勉強したことで、自然にパラメータ設計の考え方が身についたと思っています。 
 
その後の半年間、週に月・水・金の3日、埼玉県岩槻市にある当社の事業所に往復6時間かけて通う仕事ができました。ただ漫然と通うのではもったいないので、また別の先輩から実験計画法セミナーのテキストを借り、電車の中で膝の上にテキストを広げ、電卓を手に持ってテキストの計算例をトレースするということをしました。このテキストの後は、社内セミナーの講師に配布された田口玄一著「実験計画法第三版」上下巻をやはり電車の中で勉強しました。半年間、週に3日間、1日6時間も勉強する時間が得られたのは大変貴重でした。おかげで、「実験計画法第三版」上巻を4回も通読でき、30か所以上も計算ミスを見つけました。当時当社の指導にいらっしゃっていた田口先生に、計算ミスであることを直接確認できたのも幸運でした。 
 
現在、私は講師やコンサルタントを行っていますが、信頼性手法、統計手法、実験計画法、タグチメソッドを受講して理解してきたのではありません。これは以上の話からご理解いただけるのではないかと思います。 
 
BCの受講者の方々はBCの講義の中で理解しようとされているだろうと思いますが、受講はきっかけにすぎないと私は思います。通勤の電車の中で、あるいは自宅で、自分で勉強するから本当に理解できるのではないかと思います。そして、それ以上に、実際に使用してみて悩むことが重要であることを自分の経験から実感しています。 

 
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