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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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86.ベーシックコースから広がる世界<2023年02月27日>

京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 准教授
泉井一浩
(94BC・O)

 私は博士後期課程の1回生の頃にベーシックコース(94BC・O)の書記をさせていただきました。ベーシックコースでは、具体的な演習問題を交えながら統計学・品質管理手法の基礎的で実践的な手続きを数多く学ぶことができましたが、それとともに、各先生方が統計学の考え方そのものを、それぞれの方法の説明の折々に繰り返し強調して教えてくださったことが、大変記憶に残っております。ものごとの確率的な振る舞いの結果からその意味を解釈するという統計学は、他の学問と比較してその考え方やアプローチが独特なところがあります。ベーシックコースでは、他にも、STや宿題といったカリキュラムや、ソフトウェアが大きく進化した今日でも電卓での計算にこだわるところなど、統計学の根底にある考え方を徹底的に身につけるための工夫が随所に感じられます。ベーシックコースでの半年間は自身のキャリアにおいて、大きな糧になっていると感じます。 

 書記をさせていただいていた当時から、私は最適設計というオペレーションズ・リサーチの分野で研究を行ってきました。この分野は基本的には決定論的な手続きに基づいた方法が基礎としてあり、ベーシックコースで習得した手法を直接利用することはあまり多くはありませんしたが、不確実性を考慮した最適設計は大きな課題の一つであり、そのための数理最適化の手法を構築する際には、コースで統計学の基本的な考え方を教わっていたことが、大いに役立ちました。

 昨今では、人工知能や機械学習、データサイエンス分野の方法が急速に発展してきています。それらの方法の中には、統計学・確率論を基礎としているものが数多くあり、それらの技術を習得し、最適設計に応用する上でも、ベーシックコースで培った基礎が役立っています。

 このように振り返ってみますと、統計学・品質管理は、極めて実践的な側面がある一方で、その裾野・応用先が非常に広い学問であることも改めて実感します。まさにベーシックコースを起点として、そこには大きな世界が広がっているのだと感じますし、自身の若い時期にベーシックコースを受講できたことは幸運でした。ご卒業生の方々には、今後広い分野でのご活躍・ご発展をお祈りしております。

 
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