BC
77.ベーシックコースのおかげ<2023年02月18日>
一般財団法人 日本科学技術連盟 嘱託
加藤 洋一(60BC・T修了)
加藤 洋一(60BC・T修了)
ベーシックコースは、私の人生を大きく変えました。私が受講したのは、第60回ですから、いまからおよそ40年前です。
日科技連もベーシックも知らずに受講。当時は160人が受講していました。ベーシックなので基礎統計と思っていたのですが、3日で違うことが分かりました。受講者の中には講義内容を既に理解している方も、多数いらして自分はどうなるのだろうと思いました。ベーシックの意味は、このコースが終わった段階が、統計エンジニアとしてのベースができた、ということだと思います。オペレータではありません。宿題やテキストの例題が解けるのは統計オペレータです。皆さんも統計エンジニア、データサイエンティストになって下さい。
受講が終わった段階での理解度はせいぜい30%もなかったと思います。私が理解し始めたのは受講後です。BC卒業だからという理由で、好きでも得意でもない業務が続きました。仕事をしながらBCの復習です。会社では最初に管理図の講義をしました。理解不十分なままの講義ですから、受講された方には大きな迷惑だったと思います。でも続けました。10年過ぎた頃から、急に面白くなりました。ここまで統計を(自分の意志とは関係なく)続けられたことが、ラッキーでした。
ベーシックコースでつかんでいただきたいのは、ただ解析手法を覚えることだけではありません。講義を通じて知る「品質管理」のものの考え方、行動も大事です。同期入社の中では遅れていた私ですが、電話局長になったことがあります。電話局の経験もなしですから異例です。黒字になったことがない、売上目標を達成したことがない、お客様満足度では県で最下位という局でした。3年で何とかしろ、ということでしたが1年で全て達成。経験のある優秀な歴代の局長さんができないことができました。実験計画も、管理図も使いませんが、原因と結果、PDCAなどが役立ちました。そのため1年でお役御免。その後は本社で災害対策を担当しました。
品質管理を続けられたのは、抜取検査という人気のない分野が仕事だったことがあります。この分野は常に人不足です。前任の先生から強引に引き継ぎを受け、責任上続けていますが、おかげで世間が広くなりました。ISO規格は謝礼はないのですが、各国の先生と知り合いになり、親切に接していただきました。英語が苦手なのですが、サンプリングと判定が主なので、適当に通じます。
陽のあたる仕事もよいのですが、私にはこのような地味なものが本当に合っていました。
ベーシックでかなりのことを勉強したと思っていたのですが、これが大間違いでした。計数値は、正規近似ではなく二項分布、超幾何分布を使って設計します。また、計量値では、t分布でαを求めるのですが、βについては帰無仮説の条件での判定方法のもとで、対立仮説の場合に判定ミスする確率なので、非心t分布を使います。これなどベーシックでは(実は言葉は出ていましたが)教えていただけなかったものです。私は数学関係の出身でないので、頼る先生、先輩、同僚がいませんから、自分で考え、自分で調べ、それを自分で確認し、ということをするのですが、それでもだんだんと分かるようになります。この基礎がベーシックコースでした。
抜取検査を研究していると、αとβの両方を考えるようになります。しかし、ベーシックで習う手法はαばかりです。今、新型コロナでPCR検査が報道されますが、陰性を陽性と誤判定するαと、陽性を陰性と見逃すβがあるはずです。αとβが同じはずはありません。そこをはっきりさせないまま、検査の精度などが議論されています。βの観点から、検定や管理図、分散分析などを考えると、講義を受けていたときと違ったものが見えます。手法の意味を知り考えることが面白いことです。それが長続きの原動力になります。
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