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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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73.私自身を変えていった実験計画法と人との出会い<2023年02月14日>

ダイキン工業株式会社 特機事業部
平野 智也(118BC・O 修了)

1.実験計画法と日科技連との出会い
 私は入社当初は商品開発を担当していましたが、2008年ごろを転機に生産技術を担当することとなり、当時、事業部内で問題となっていた『製造工程内の溶接品質の安定化』というテーマに直面することになりました。そこでは、様々な要因による溶接不具合が顕在化し、修正工数や廃却不良が発生しており重要課題になっていました。

 私はそれまで溶接には全く携わったこともなく、勘や人の経験に頼った手探りでの対応しかできておらず、毎日、製造部から上がってくる問題に悩み続ける日々を過ごしていました。

 そんな中、定期的に行われていた品質会議の場で、その当時の担当役員から「実験計画法を使って要因分析してみろ」という指導を受けたのが、その後、私がSQCを学び続けるきっかけでした。 当時の私は、お恥ずかしいことに『実験計画法』という言葉すら知らない技術者で、その会議の直後、『実験計画法とは』からインターネットで調べました。そのとき、日科技連のホームページを見つけ、タイムリーにも翌週から実験計画法のセミナーが始まることを知り、すぐに電話して、急遽、飛び込みで参加させて頂いたのを記憶しています。それが、後に品質管理セミナーベーシックコース(BC)の受講につながっていったのです。

2.実験計画法のすばらしさを体感
 セミナーを受講しているときは、知らないことを知る楽しみと、これを使えば、要因を統計的に分析できるという期待感のようなものを感じ、一方で、実務の場面で本当にうまく使えるのかという不安もありました。ただ、現場の問題をはやく解決したい思いから、さっそく、セミナーで学んだ『2水準系の直交表実験』を使って、実験を計画し、データ取得を開始しました。 どうしても、生産設備を使用する必要があり、生産がない深夜しか実験ができず、実験計画法の基本原則である無作為化をするために、各データを取得するたびに、愚直に一つ一つ設備条件を設定し直したため、データ取得に4日間ほど掛かり、冬の深夜に寒さに耐えながら、苦労してデータ取得したことを覚えています。

 実際、データを取得しているときは、どの要因が不具合に影響しているかはわからず、本当に要因を見つけられるのかと、相変わらず不安な気持ちでいっぱいでしたが、黙々とデータを取得し、データが出揃い、いざ、パソコンに向かい、分散分析を行ったときに、これまであまり重要視していなかった要因が影響していることがわかり、最終的にある溶接不具合を解決することができました。その時が、初めて実験計画法のすばらしさ、頼もしさを実感した瞬間でした。

3.品質管理セミナーベーシックコース(BC)の受講
 実験計画法の面白さを実感した私は、実験計画法をはじめとするSQCの分野に更に興味を抱き始めていきました。まずは、日科技連大阪事務所が主催している実験計画法に関する部会(DEO部会)へ参加していました。そこでは、前項で紹介した実務データを使うなどして、幅広い解析方法を先生方に指導頂き、その結果を、実験計画法を使い始めて間もない私に、関西支部の品質管理学会で事例発表してみたらどうかという機会を頂きました。少し学んだばかりの私が、学会に出席している先生方の前で報告するのは、背伸びし過ぎで、おこがましくないかと不安でいっぱいでしたが、気持ちを切り替え、チャレンジしてみることにしました。
 発表では、色々な先生方から質問を頂き、案の定、うまく答えられない自分に直面し、まだまだ勉強不足であるということを痛感し、実験計画法だけでなく、やはり、もっと幅広くSQCを学び、現場の色々な場面で活用したい、更には、色々な先生方とも議論できるようになりたいという思いで、当時の上司へ申し入れ、BCを受講することができました。
 BCの6か月間は、実務もある中、大変な研修でしたが、BCで学んだ、管理図やワイブル解析による故障予測、適合度の検定など、その後、実務の場で色々と利用していきました。もちろん、うまく問題が解決するときと、解決しないときがありましたが、まずは使ってみることを基本姿勢として取り組んできました。

 BC終了後は、SQC部会へも出席するようになり、最近では、ST委員もさせて頂き、様々な会社や大学の先生方と知り合うことができ、その中で色々と指導も頂きながら、議論をさせて頂き、私にとって大変貴重な経験につながっています。

4.今後の目標
 私は会社の中で、商品開発 ⇒ 生産技術 ⇒ 研究開発 ⇒ 企画 という道を歩んでいっています。この2019年から企画業務に就くことになり、新たな環境で仕事がスタートしています。企画業務であれば、新QC七つ道具やQFD、商品企画七つ道具などが活用できます。
 しかし、実はまだ残念ながら、ほとんど企画の現場で活用できていません。次の目標は、これらのツールを業務の中で活用し、言語データを使いこなし、戦略立案や商品企画や事業企画の検討、問題解決につなげていけるようになることです。私を含めて、ほとんどの方は、所属している部署毎で、使う手法が限られてくるのではないかと思います。人は使わないと忘れてしまいます。そのためにも、BCで学んだことを触れられる環境に身を置くことも大切だと考えています。

 最近、業務で休みがちになっていますが、引き続き、日科技連の各部会(DEO部会やSQC部会)へ参加し、絶えずSQCに触れる環境を自ら作り、業務が変わっても、活かせるように心がけていきたいと考えています。

5.最後に
 今回、BC-Newsを担当させて頂き、改めて自分を振り返って感じたことは、日科技連を通じて、いつも人に支えられながら、失敗する度胸をもって、何事にもチャレンジできたこと、そして、私自身を成長させてもらえていることです。皆様に心より感謝致します。
 最後まで読んで頂きありがとうございました。 

 
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