派遣責任者、参加者インタビュー:CACエクシケア株式会社Interview

臨床試験セミナー 統計手法専門コース(BioS)
派遣責任者、参加者インタビュー CACエクシケア株式会社様

「BioS受講により、解析担当者が試験全体を見渡した上で、他部門との舵取りを行うようになり、成長を感じています!」
(派遣責任者:執行役員 大阪支社長 横山竜也様)


CACエクシケア株式会社は、2012年4月に株式会社シーエーシーの医薬品開発支援事業を会社分割し、設立されました。

設立から47年にわたって製薬会社へITシステムを提供してきたシーエーシーが築き上げてきた技術と信頼を受け継ぎ、CROビジネスを着実に伸長させています。

また、同社は人材育成を重点方針として各種教育を展開していますが、中でも日科技連が24年間に渡って実施している統計専門家養成のための一年間の長期コース「臨床試験セミナー 統計手法専門コース」(以下、BioSと言います)に継続的な派遣をいただいています。

今般、BioSセミナーの派遣責任者の方と実際に参加された方に、そのねらいや感想、今後の臨床試験における統計の重要性等について、様々なお話をお聞きしてきましたのでご紹介します。

(聞き手:日本科学技術連盟 安隨 正巳)
インタビュー:2014年11月

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派遣責任者:執行役員 大阪支社長 横山 竜也様
参 加 者:大阪支社 統計解析グループ 浅田 優様

(Excellent)+(IT)+(HealthCare)=エクシケア

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経営理念

聞き手: まずは、貴社の概要をお教えいただけますでしょうか?

横山:当社は、2012年に株式会社シーエーシーから分離してできました。医薬品の臨床開発、申請、製造販売後調査、安全性情報管理等の業務受託を行うCROであり、かつ業務に関するシステムコンサルティング、システム開発、保守、運用まで一貫したサービスを提供するシステム・インテグレータでもあります。

聞き手:もともとは、お客様である製薬会社へのITシステムの提供から始まったことをお聞きしました。

横山:はい。そうです。まだまだ医薬業界の外ではシステム会社としての認知度が高いですね。

聞き手:貴社の社名に入っている「エクシケア」とはどのような意味なのでしょうか?

横山:(EXICARE)は、「優れた(Excellent)情報技術(IT)」と「健康産業(HealthCare)」から表現した造語です。当社の強みであるITの業務ノウハウとCROを融合させてお客様の問題解決に尽力する基本的な姿勢が表現されています。

CROでありシステム・インテグレータでもある強みを持つ企業

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横山支社長

聞き手: 横山様は、大阪支社長でいらっしゃいますが、東京、大阪拠点の人数はそれぞれ何名ずつくらいなのでしょうか?

横山:当社の従業員数が約1000名、大阪支社には300名強が在籍しています。全体でみても、関西拠点での事業実績は大きなウェイトを占めています。

聞き手:CRO業界の存在感は年々高まってきていると感じていますが、その分、業界内での競争は激しいものがあると思います。その中で貴社が競争優位を実現するために、どのような戦略や取り組みをされているのでしょうか?

横山:他社との差別化を実現しなければ競争に勝ち残っていくことは出来ません。先ほども言いましたが、私たちが標榜しているのは「システム・インテグレータ」です。システム・インテグレータは業務上の問題の聞き取り・定義から、問題解決に有用なソリューションを、IT技術を用いて開発し、お客様とともに問題解決に尽力いたしますが、医薬業界においてもそれは同様です。特に臨床試験となりますと、特にDMなどでシステム開発は必須となりますので、当社の強みであるITを中核技術とし、システムの開発からDM・解析・申請などの運用までをトータルでサポートさせていただいております。システムの得意なCROはあっても、システム会社を母体とするCROはほぼ無く、大手に対しても大きな独自性を打ち出すことが可能となっています。

聞き手:なるほど。そこは大きな強みといえますね。

横山:それと、“人”ですね。最後は人にかかっていると思っています。そのための人材育成には重点を置いています。例えば統計解析であれば、BioSの受講もその一環ですね。

BioSの合格証は、医薬統計専門家であることのお墨付き

聞き手:貴社からは、シーエーシーからの分離以前も含めますと、10年間絶え間なく13名の方がBioSに参加いただいています。横山支社長は、BioSの存在自体を知ったのはいつどういう経緯でしたでしょうか?

横山:私がCRO業界に携わり始めたのが2003年頃なのですが、製薬企業の方と「統計解析の教育にどういうものがあるか?」と何気なく話しているときに出てきたのがBioSでした。

聞き手:どういう会話の流れの中でBioSが出てきたのでしょうか?

横山:「私はxxBioS卒業です。」「そうですか。私はxxBioSなんですよ!」といったような会話が交わされていたので、最初は何のことかと思いました(笑)

聞き手:お陰さまで、BioSの「合格証」は統計専門家の“お墨付き”であるとの評価もいただいており、主催団体として大変有難い限りです。その当時、貴社でも、既にBioS卒業生を多く輩出していたのではないでしょうか?

横山:はい。当時から統計解析部門では多くのメンバーが受講していましたね。

臨床試験の全体像を見て自らの役割を考えることが重要です!

聞き手:浅田さんは2013年度のBioSにご参加いただきました。お申し込みは随分早い段階でされていたのでしょうか?

浅田:そうですね。ただ、ちょうど多忙な時期で、業務の調整を直前まで行っていたので、初回の受講は2013年4月だったのですが、参加が確定したのは本当に直前になってしまいました。

聞き手:BioSの受講期間中、支社長はどのような報告を受けておられたのでしょうか?

横山:改めての報告は特に受けていません。日常会話の中で触れて、様子は聞いていました。

浅田:直属の上司には、「今月はこのような内容でした」というような簡単な報告と相談は随時していました。横山支社長には、会議と会議の間や、すれ違う時に雑談ベースでお話をしていました。

聞き手:浅田さんの周囲では、BioSは何名くらい受講されているのでしょうか?

浅田:大阪支社の統計解析部門は10名いるのですが、現在のメンバーで受講したのは自分だけです。事前に試験、ではないですが、少し難しい課題がありまして・・

横山:誰でも簡単にBioSを受講させているわけではありません。

聞き手:と言いますのは?

横山:重要なことは、BioSを受講する意義を本人が理解しているかどうか、です。BioSの受講を希望する際には必ず本人に確認しています。CACエクシケアのCROとしての業務の幅は近年広がってきていて、全体のビジネスとしては、DM/PMSや安全性の方が、当然規模が大きいです。ただ、その中で解析担当者の果たす役割は非常に大きい。最終のアウトプットを出力するには統計解析のスキルが必要ですし、途中の工程を最終の成果物の視点から支援できるのも解析の担当者です。臨床試験のあらゆる場面で果たす役割が彼らにはあります。

聞き手:なるほど。

横山:ただ、そうした臨床試験全体を体験するような経験は実務で得る機会がなかなか無い。そこで、BioSが出てくるのです。ですから、解析の役割を理解して、前後の業務もある程度把握する頃、最低でも実務を3年程度経験した者を対象にしないと受講効果は薄くなると考えています。その点を満たしていれば、解析グループ以外でも、データマネジメント(DM)業務の者も参加させたいですね。

横山:もちろん予算との兼ね合いもあるのですが、「BioSを受けたい!」という人間も出てきています。ただ、先ほど言った受講条件があるので、“待ち行列”ができている状態です。(笑)

BioSの総合実習により、他部門の“あの時の反応”がはじめてわかりました!

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浅田様

聞き手:浅田さんは、BioS受講に関して何かを成果としてまとめられましたか?

浅田:はい。受講前には、何故BioSの受講が必要なのかをまとめた簡単なレポートを、合格後には教育資料を作成しました。BioSを通じて得たものや、解析の基礎、他部門との接し方など、後輩や他の部署の方に伝えられることはどんどん伝えていきたいと考えています。
また、定期的に勉強会を開いて、解析の基礎的な部分について継続的に勉強を続けています。

聞き手:横山支社長は、レポートをご覧になりましたか?

横山:はい。もちろん見ました。レポートを見て、「期待通り考えてくれている」と感じ、嬉しかったですね。

聞き手:受講前にBioSに期待したものは何だったでしょうか?

浅田:当時は、統計解析業務を始めて5年目でしたが、臨床試験全体を見た仕事をしてみたい、と常に思っていました。DMやPMSとの連携も経験していましたが、他部署の実務経験はなく、全体を見るためには視点が偏っているな、と感じていました。BioSには、「総合実習」があって臨床試験を模擬体験すれば、それが補完できるのではないかと思いました。

聞き手:期待通りでしたか?

浅田:はい。期待通りでした。やはり、やってみるのと、聞くだけでは全く違いました。 これまでは統計の立場でしか考えていなかったので、相手の反応の意味が理解できなかったのですが、自分でプランから作業まで携わって「あの時の他部門の反応は、こういうことだったのか!」と実感できたのは非常に重要な経験でしたね。

聞き手:受講を通じて、一番役に立ったものは何でしたか?

浅田:総合実習があり、座学で聞いたことを、その場ですぐ実践できた点ですね。やはり、やってみないことには自分のものになりませんから。

聞き手:浅田さんは、社長(※)は買って出たようですね?(※BioSでは、総合実習のグループを”社”、グループリーダーのことを“社長”と言っています。浅田さんはA社の社長でした。)

浅田:いえ、買って出たわけでは…。その時のメンバーで一番年齢が高かったので(笑) やってみると、社長の負荷は正直大変でした。特に、私の場合は大阪からの参加でしたので、会議の設定と平常業務の合間を縫っての時間のやりくりに難儀しましたね。

聞き手:横山支社長はその点を何か感じ取られていましたか?

横山:はい。見ればわかります(笑)。「これはよくやっているな!」と思いましたよ。ちょうど忙しい時期でもありましたが、受講にあたっての最初の条件が“業務はきちんとこなす”でしたので。

自主的な飲み会とコミュニケーションと人脈形成

聞き手:浅田さんの受講後の成長は感じ取れますか?

横山:人の話をよく聴くようになったと思います。耳を傾けようとする姿勢を感じます。浅田さんは、当社の解析部門の専門家であることもあり、常に“意見をまず言うこと!”が中心だった気がします。それがBioS受講でいろいろな意見があることを知ったのではないかと思います。

聞き手:浅田さん。今の支社長のコメントに対してどうですか?

浅田:はい。そう言ってもらって本当に嬉しいです!

聞き手:他社の参加者とのコミュニケーションはうまくとれましたか?

浅田:はい。毎月のグループでの総合実習には終了指定時間があったのですが、A社は毎回、終了指定時間内に終わっていまして・・、

聞き手:時間管理がしっかり出来ていたということでしょうか?

浅田:いえ、議論は早めに切り上げて、「続きはこの後で…」とほぼ毎回飲み会をしていました。 コミュニケーションのメインが総合実習ではなく、飲み会だったので(笑)

聞き手:そういうことでしたか!(笑)

浅田:大事なことは飲み会で決めていましたね。むしろ、総合実習の本番はその後の飲み会だったかもしれません(笑)。それは冗談ですが、お陰でどの班にも負けないチームワークが構築できたように思います。BioSの修了後もたまに飲み会をしているんですよ。こういった繋がりは本当に貴重なものだと感じています。

聞き手:一番心に残った講義はどの先生の講義でしたか?

浅田:そうですね・・どの先生のお話も非常に興味深かったのですが、あえて言えば、やはり、大橋靖雄先生(中央大学)の講義ですね。話題が最先端で、ニュースにも上がっていないような内容の講義もあり、常に新鮮で非常にためになりました。それと、吉村功先生(東京理科大学)の講義です。初学者が躓きがちなポイントが丁寧に押さえられていて、とにかくわかりやすかったです。吉村先生の講義を受けて、後輩や部下へ「こう教えれば伝わる!」がわかった気がします。

聞き手:BioSを修了されてみて、部下の方に参加を薦められますか?

浅田:はい。自信をもって、後輩に「参加して来い!」と言えますね。ただ条件があります。

聞き手:条件とは?

浅田:横山支社長も仰っていましたが、「業務に対して自分なりの考え、判断基準を持って参加する!」ことです。例えば、総合実習でプランニングをする場面があるのですが、自分自身で考え抜かないと、実習の意味がありません。そういった場面で自分の判断基準を持っていないと、素早い意思決定が要求される中で他人の意見に流されてしまいます。そうなるとBioS受講の成果は半減してしまうと思います。各講義、実習において常に、当該講義がどういったことを目的としているのか、実務上ではどのような場面で利用できるのかを先回りして考え、実際に使う視点で受講していただきたいと思います。

聞き手:BioSで製薬会社の方や、同業のCRO他社の方といろいろな話をされたと思いますが、何か感じたことはありますか?

浅田:やはり、製薬企業とCROでは色々な部分で考え方が違うと感じました。例えば、p値に関する考え方1つとっても、CROの解析担当者は、堅い結果を堅い手順で行うことに注力しがちなのですが、製薬企業の担当者は、「臨床試験の成功」を第一に考えられていて、保守性に対して立場の違いを大きく感じました。また、CRO同士の話では、中々知ることのできない他社のやり方を想像することができ、非常に有意義でした。こうした実感の1つ1つが、今後の業務の上で相互理解に役立つものだと考えています。

CRO業界で競争優位となるのは人材です。“人が育つ文化”を作っていきたいと考えています!

聞き手:横山支社長。ズバリお聞きしますが、人を育てるために重要なことは何だとお考えでしょうか?

横山:“環境”だと思います。それは“器”と“周囲にいる人たち”ですね。抜きんでる人間は放っておいても自ら成長します。しかし、多数である平均的な人間は周囲の環境に影響を受けます。

聞き手:平均的な層を強化するべきだと?

横山:はい。そうです。全体の底上げが組織の力を高めます。育った人間が、また人を育てます。その仕組み、サイクルが出来ている会社は強い。これは一般に“DNA”とか“文化”と言われるものなのだと思います。当社をそういう文化にしてきたいですね。今、少しずつそれに近づいているような手応えは感じています。

聞き手:セミナーで浅田さんと接してみて、また本日支社長とお話が出来て、貴社の組織文化を垣間見ることが出来た気がしています。

横山:人事制度を含めた部分は「器」です。器は会社が作ります。あとは、各人がどう考え、動くかです。出来る人は、浅田さんのように今自分に必要なセミナーを自ら探してきて、器の拡大に寄与します。そういう自律型人材を併せて増やしていきたいですね。

聞き手:本日は、参考になるお話をありがとうございました!

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