派遣責任者、参加者インタビュー:大鵬薬品工業株式会社Interview
臨床データマネジメントセミナー(CDM)
派遣責任者、参加者インタビュー 大鵬薬品工業株式会社様
「医学・薬学に関する幅広い知識を持ち、DM業務全体をデザインできる、"コミュニケーション力"の高いDMが必要です!」
"チオビタドリンク""ソルマック""ハルンケア"等で知られている大鵬薬品工業株式会社。同社は製薬業界内でも「がん治療薬のリーディングカンパニー」として一目を置かれています。
同社は、「薬づくりは、人づくり」の考え方に基づき、人材育成に注力し、臨床統計教育にも多くの人材を派遣しています。日科技連が主催する「臨床データマネジメントセミナー」には5年連続で参加者を派遣し、8年間で7名の実績があります。
今回は、2012年度「第44回 臨床データマネジメントセミナー」にご参加された同社データサイエンス部の土生(はぶ) 敏明さんと派遣責任者である竹田 孝一さんにお話を伺ってきました。
また、データマネジメントの今後の動向やデータマネージャーに求められることについてのお考えも伺ってきましたので、併せてご紹介をいたします。
(聞き手:日本科学技術連盟 安隨 正巳)
派遣責任者:開発本部 データサイエンス部 竹田 孝一様
参加者:開発本部 データサイエンス部 土生 敏明様
創立50年を節目に今後はグローバル化に対応し、更なる飛躍を目指す!
聞き手:まずは、貴社の歴史と事業内容を簡単にお教えいただけますでしょうか?
竹田:弊社は1963年に大塚グループの一員として創業され、お陰様で、今年で創立50年を迎えました。常に創意と工夫により、がん化学療法に貢献できる薬剤開発にチャレンジを続ける一方で、免疫・アレルギー、泌尿器領域においてもユニークで新規性のある医薬品開発に精力的に取り組んでいます。
また、ヘルスケア事業では、「チオビタドリンク」や「ソルマック」「ハルンケア」等の"愛情ブランド"を育て上げてきました。
聞き手:チオビタやソルマックなど、確かに確固たるブランドを築き上げられています。また、抗がん剤の分野でも創業から現在まで、広く名を轟かせていますよね。
これからはどういった方向を目指していかれるのでしょうか?
竹田:「グローバル化」です。既に臨床開発拠点として稼働している米国、中国、シンガポール法人に加え、本年には欧州法人の体制を拡充し、グローバル試験を行う体制を強化しました。販売においても、アジア諸国と欧州諸国での展開を開始しており、今後は世界市場において大鵬薬品のプレゼンスを積極的に拡大していきます。
聞き手:日本のみならず、世界中の人々の笑顔のために、ご発展が期待できますね
自社のDMに求める"人財"育成のためCDMセミナーに継続参加中 ―CDMセミナーへの期待
聞き手:貴社のホームページを拝見すると、「"人財"の確保、教育、活用が重要であり、グローバルに通用する人材の育成をさらに進めていく」旨が書かれていますが、日科技連の臨床統計セミナーでも「臨床試験セミナー 統計手法専門コース(BioS)」や「臨床試験セミナー 統計手法コース(CT)」など継続的に派遣いただいています。
竹田:はい。当部門のみではなく、全社的に活用させてもらっています。
聞き手:特に、「臨床データマネジメントセミナー(CDMセミナー)」には8年間で7名を派遣いただいていますが、CDMセミナーに参加することになった経緯を教えてください。
竹田:私の所属するデータサイエンス部には、日科技連のCDMセミナー参加枠があり教育の一環としています。ある程度社内の業務を理解していてDMの現場を知っている人がいれば、毎年出すようにしています。ただし、現場を知らない社員は派遣しません。
竹田:また、人事異動してきた社員には、本人の持っている知識やスキルを考慮しながら、キャリアパスの一環として派遣しています。
聞き手:土生さんは、昨年度(2012年度)に本コースに参加いただきましたが、竹田課長に説明いただいた教育の一環として受講されたということですね?
土生:はい。そうです。上司の竹田に勧められたことがきっかけです。
私は2007年に入社後、ずっと情報システム部にいたのですが、昨年データサイエンス部へ異動となり、異動一年目にCDMセミナーを受講しました。
竹田:実は、私も日科技連のBioSセミナー(臨床試験セミナー 統計手法専門コース)に17年前に参加したことがあるんですよ。
聞き手:えっ。そうなんですか!BioSセミナーといえば、統計専門家を1年間で養成する、日本を代表するセミナーです。
竹田:はい。そうです。私自身、BioS受講により"外に出て、外の空気を吸うことの重要性"を、身をもって知りました。外に出ることは、半分は息抜きにもなりますしね(笑)セミナー受講をきっかけとして、知識修得以外にも情報収集や人脈構築等いろいろなことを吸収してもらいたい、という気持ちで参加を勧めました。
聞き手:本コースには、DMの立場の方が40名ほど参加されているのですが、一口にDMと言っても、製薬会社だけでなく、CRO、大学病院、医療センターなど様々な組織から参加されています。
竹田:そこが良いところなのです。社内だけにいるとどうしても視野が狭くなります。他組織のDM業務は自社と幹は同じでも枝葉はかなり違いますので、他社のDM担当者と交流することは本当に有益であると思います。
聞き手:土生さんも、そういう観点での期待も持って参加されたのですか?
土生:はい。それはありました。ちょうど、目の前の業務に集中しすぎて周りが見えづらくなっていたタイミングでしたので、セミナー参加により、一歩引いて自分の業務を見ることができるかなと思いましたし、他社とのディスカッションを通して情報交流してみたいという期待が強かったですね。
聞き手:では、実際にご受講されて期待どおりでしたか?
土生:はい。他社の方と交流して様々なことを学んだので、参加してとても良かったと思っています。DMって意外と外に出る機会が少ないんですよ。
「置かれている立場が違うと見えてくるものも違う」と改めて感じました!
聞き手:土生さん、実際にセミナーへ参加した感想を教えてください。
土生:まず、落ち着いた環境で研修に集中できた点はとても良かったですね。講義は、実務でやっていたこともあり、それほど難しいとは思いませんでしたが、ワークショップの中で様々な考え・意見を整理し、より良い方法を探していく、またそれを通じ、他社事例をたくさん聞くことができたのが一番良かった点です。
聞き手:講義や演習の中で心に残った言葉はありますか?
土生:澤向 慶司先生(シンバイオ製薬株式会社)が講義中に言っていた"全部のデータをみる必要はない"ということですかね。実は、そういう考えは自分にはなかったので、とても心に残りました。一つの考え方として素直に吸収することができました。
聞き手:演習では、当時の参加者との交流は今でも続いていますか?
土生:はい。続いていますよ!先日も飲み会を行いました。(笑)これからもセミナーで出逢った方との交流を大切にしていきたいと思っています。今回セミナーに参加して、講師や他社からの参加者・アカデミアの方々の意見や考え方を聞くことで、自分を見つめ直すことができました。置かれている立場が違うと、見えてくるものも違うんだなと改めて感じましたね。
聞き手:私どものような財団は、"人と人"、"企業と企業"の橋渡しをすることが存在感につながると常々考えていますので、そう言っていただけるととても有り難いです。
今後のDMに求められるもの
聞き手:それでは、竹田さん、土生さん、せっかくの機会ですので、これからのDMに求められるものについて是非ご意見をお聞かせいただけませんでしょうか?
竹田:"医学・薬学に関する幅広い知識"は持っていないとまずいでしょうね。これは必ずしも深い知識を持つ必要はありませんが、データを取り扱う上で、幅広い知識がないと、とんでもない間違いを起こしてしまう可能性がありますからね。
竹田:次に、CRO等との交流が増えてくるので、外部とうまく付き合っていける"コミュニケーション力"も不可欠でしょう。
聞き手:コミュニケーション力はどんな仕事でも重要ですね。最近は、昇進や採用等でもヒューマンスキルという観点が求められてきているようです。これはコミュニケーション力が求められている証左でもありますね。
土生さんはいかがですか?
土生:私は、陽気でDM業務だけの知識に留まらない様々な知識を持ったDMが増えれば良いなと思っています。様々な知識を持っていれば、CROや他の方との交流にとても役立つと思います。
竹田:その点は、そうですね、私も、深くなくてもいいから幅広い知識を持った、コミュニケーション能力の高いDMが必要なことに賛同します。
聞き手:今、お二人がおっしゃったような人材を養成する、といった観点も含めて、コースのPDCAを回していきたいと思います。
「セミナーに参加後、参加前と比べて、どのように変わったのかが一番大事だと思うんです」 ―今後の日科技連CDMセミナーの方向性
聞き手:それでは、最後に、セミナーあるいは日科技連への要望事項等ありませんでしょうか?
竹田:そうですね、将来を考えると、EDCあるいはePROに特化した実習を入れていただけると参加者を派遣する側としては有難いですね。それと、DMは品質管理が重要なので、統計に加えて品質管理の話も加えてほしいですね。
土生:私は、フォローアップ研修等を考えてほしいです。どのセミナーに参加する場合も共通して言えることだと思いますが、セミナーに参加後、参加前と比べて"行動がどのように変わったか?(行動変容)"が一番重要な点だと思うんです。ですので、そういったことが確認できるような取り組み、またフォロー研修のようなものをしていただけると有難いです。
聞き手:実は、CDMセミナーについては、フォローアップコースを作ろうと検討中なのですよ。初級に参加された方のフォローアップも含めて、中級コースも設置し、初級・中級の2コースを開講することを検討しています。セミナーに参加された方が、十分満足していただけるよう、ニーズやご要望にどんどん応えていきたいと思っておりますので、これからも何かございましたら、お気軽に申し付けいただければと思います。
土生:是非、実現してください。
本日は、参考になるお話をありがとうございました。